従来の人事制度では給与への不満はなくならない
① ある程度は実力に見合う給与が支払われている必要がある
② 管理職に高いスキルが求められる
③ 本質的には給与の決定プロセスが変わっていない
そして前回に、給与の決定プロセスに本人が参画するべきだということをお伝えしました。
今回は、私がそのような考えに至った理由について、述べていきたいと思います。
■給与への不満は「給与額」への不満ではない
多くの企業・組織で、自分の給与に不満を持っている人は多いかと思いますし、社員さん向けのサーベイを実施すると「給与に不満がある」という回答をされる社員さんがたくさんいらっしゃいます。
一般的に、人事の世界では、給与への不満の多くは「評価に対する不満」だという解釈がされることが多いのですが、私はそれだけではないと考えています。
もっと根本的には、給与への不満は、「自分が知らないところで決まっている」ことへの不満だと考えています。
給与というのは、社員さんにとっては生活の糧でもありますし、人生にとっても重要な要素です。
その自分の人生にとって重要なことを、自分の知らないところで決められているということに対する反発心のようなものが、給与への不満の根っこにあるのだと思います。
そのような反発心は、私はとても当然のことだと思いますし、その意味で言うと、一般的な給与制度は「民主的」ではないと感じています。
■給与決定プロセスを「民主的」にする
ウィキペディアでは「民主主義」を
「組織の重要な意思決定を、その組織の構成員(人民、民衆、大衆、国民)が行う、即ち構成員が最終決定権(主権)を持つという政体・制度・政治思想」
と定義していますが、もっと簡単に言うと、
「民主的」とは、「大事なことは話し合って決めよう」ということです。
給与という大事なことを決める話し合いのテーブルに、本人が就けないというのは、やはり「民主的」ではないと思います。
給与を自己申告にしてもらう取り組みは、給与決定プロセスを「民主的」にする試みです。
プロセスを民主的にすればすべてが解決するとは思ってはいませんが、少なくとも社会のあるべき姿には近づくと考えています。
■人は自分で決めたことには責任感が出る
「大事なことは話し合って決めよう」という価値観の背景には、「人は自分で決めたことには責任感が出る」という人間観があります。
私は、この人間観から自己申告型給与制度を発想しましたし、実際に自己申告型給与制度の設計・運用のサポートを通して、この人間観によって企業・組織を運営する方が、組織側にとっても社員さん側にとってもよい影響が出るということを実感しています。
次回からは、実際に自己申告型給与制度とはどんな取り組みなのかについて、お伝えしていきたいと思います。