ノーレイティングが生まれた背景とは?
「社員さんに点数をつけない」
「社員さんをランクづけしない」
という従来型人事制度とはまったく違うコンセプトの『ノーレイティング』という人事制度が生まれた理由は何だったのでしょうか?
今回は、ノーレイティングが生まれた背景について解説していきます。
ノーレイティングが生まれた背景とは?
アメリカのグローバル企業がノーレイティングに舵を切った理由は、組織・個人のパフォーマンス(業績・成果)を高めるために、
「内発的動機づけが必要不可欠になった」
ということが挙げられます。
内発的動機づけとは、仕事をする理由が「楽しい」「おもしろい」「やりがいがある」というように、仕事そのものが動機になっているということです。
このことをフロー理論のミハイ・チクセントミハイ氏は「自己目的的」と呼んでいますが、何か別の目的(報酬)のために仕事をしている状態ではなく、仕事そのものが(心の)報酬になっていることをいいます。
内発的動機づけの逆が「外発的動機づけ」ですが、言葉の通り、外からの刺激(アメとムチ)で人を動かそうということです。
従来型人事制度は、給与額やその根拠とされる評価点によって、組織成員を思う通りに動かそうという構造ですが、心理学や脳科学の研究によって、それではパフォーマンスが高まらないことが明らかになりました。
高まらないどころか、逆効果であることが分かってきたのです。
外発的動機づけによる従来型人事制度は、効果が低いだけではなく弊害さえあることが分かってきたので、内発的動機づけを喚起するためにノーレイティングが考えられました。
つまり、ノーレイティングは、従来型人事制度の延長線上のコンセプトではなく、まったく逆のコンセプトに基づいています。
内発的動機づけが必要な理由とは?
次に、内発的動機づけが必要になった大きな理由として、
「創造性を発揮しなければならない仕事が増えた」
ということがあります。
このことはずいぶん前から言われていたことですが、成熟した経済のもとでは、成果をつくるには創意工夫が必要です。
創造性や主体性、情熱がなければ、よい結果を出し続けることが難しくなりました。
言い換えると、「仕事をやらされている」という意識では、これからの社会では良い仕事はできないのです。
やらされ感で仕事をしていると、どうしても意識が現状維持になり、そこに創意工夫するという意欲が湧いてきません。
もっとひどいケースでいうと、「いかに怠けようか?」「いかにごまかそうか?」という意識が働いてしまうこともあります。
それは、組織側だけではなく、社員さんの職業人生を長い目でみれば、社員さんご自身にとっても望ましい状態ではありません。
このような背景があり、従来型人事制度とはまったく違うコンセプトの「ノーレイティング」が生まれたのです。
私は、この「ノーレイティング」という人事制度は、組織や個人のパフォーマンスの向上ということだけではなく、もっと大きな社会的意義があると思っています。
次回は、ノーレイティングの社会的な意義について解説したいと思います。