生きがいラボ株式会社

介護事業所開設の失敗事例と成功ポイント1 経営者と現場のコミュニケーション

14.09.07
業種別【介護業】
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高齢化の進展により要介護認定者数は増加し、それに伴い毎年数多くの介護事業所が設立されています。
厚生労働省の統計では、訪問介護サービス事業所、通所介護サービス事業所はともに30,000件を超える事業所数となっています。
しかし、同時に毎年多くの介護事業所が経営の目処が立たずに廃業に追い込まれているというのも事実です。

今回は社会保険労務士として人事労務の側面からの失敗事例を基に介護事業所を開業する際の成功ポイントを探っていきたいと思います。
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介護事業最前線

経営者が管理者を兼任する事業所の場合では、現場の事業運営やスタッフの管理はうまく回っても、経営者としての業務に就く時間が限られてしまい、 新たな営業活動や事業拡大には支障を来すことになります。
事業拡大を考えているのであれば、現場を任せられる管理者がやはり必要となります。

デイサービスや訪問介護事業所等で最も多い小規模介護施設を経営する上での失敗の多くは、経営者が介護事業について無知なケースが挙げられます。

介護事業への新規参入は容易にできても、経営の継続となると高い専門性と介護に対する知識が求められます。

しかし、オーナーとして資金は出すが、実際の事業運営については現場の管理者任せになってしまい、本当に運営に必要な資金かどうかが正確に判断できなくなり、管理者やスタッフの雇用維持のため人件費ばかり費やしてしまうことがあります。

また、このような場合、ケアマネージャーの権限が強くなりすぎることが多く、退職されるリスクを回避するため、ケアマネージャーの要求通りに進めてしまい、最終的には経営資金がショートするという失敗事例もあります。

以上から検証すると、失敗の多くは経営者と管理者とのコミュニケーション不足にあると言えます。

コミュニケーション不足の事業所では、経営者が現場の温度感を知らず、介護に対する知識を習得する意識がないため、スタッフのモチベーション低下につながり、良い人材が辞めてしまったり、管理者との意識のズレ等の悪循環により経営数値に大きく影響することにもなります。

専任の経営者である場合、現場スタッフと少しでも
コミュニケーションを図れるように対策を取ることが出来るかどうかが
成功の大事なポイントになるのではないでしょうか。

◆コミュニケーション不足の対策例◆
・定期的にスタッフとのミーティングに参加する
・朝礼または終礼に参加し、現場感を体感する
・経営者自ら介護系の資格を取得する、または一般的な知識を習得する
・定期的に管理者やスタッフと個人面談を実施し、不満や意見をヒアリングする
・人事評価制度を管理者とともに作り上げる



[プロフィール]
田中 靖浩(たなか・やすひろ)
牧江・田中社会保険労務士法人所長・特定社会保険労務士。
創業から35年以上の歴史を誇る牧江・田中社会保険労務士法人、所長。これまで労務管理を支援してきた企業は1000社以上。現在、500社ほどの企業を顧問先として抱え、社会保険に関する事務のアウトソーシング、企業防衛型就業規則の作成と社内規則の整備、助成金申請などを受託。