生きがいラボ株式会社

50人未満の事業所でもストレスチェックが義務化へ!

25.09.02
業種別【介護業】
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労働安全衛生法に基づき、従業員数が50人以上の事業場には「ストレスチェック」の実施が義務づけられています。
この制度はメンタルヘルス不調の早期把握・一次予防を目的として2015年12月に導入されました。
今回、政府は従業員数50人未満の事業場にも義務化を拡大する改正法案を、2025年3月14日に閣議決定し、同年5月14日に公布しました。
施行は公布後3年以内、遅くとも2028年5月までに、事業場の規模にかかわらずストレスチェックが義務化される見込みとなっています。

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介護事業所におけるストレスチェックとは?

「ストレスチェック」とは、労働安全衛生法に基づき、2015年12月より従業員50人以上の事業場を対象に義務化され、50人未満については当分の間、努力義務とされてきた制度で、労働者の心理的な負担の程度を調査するものです。
厚生労働省が指定するストレスに関する「質問シート」に労働者が回答することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べ、把握することができます。

これまでは常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して、ストレスチェックの実施が義務づけられていました。
この「事業場」とは会社全体ではなく、一般的に「同じ場所で、同じ業種・業態の業務を行なっている組織のまとまり」を指しています。
たとえば、介護事業であれば、本社、支店、施設、営業所などはそれぞれ別の事業場とみなされます。
人数規模が大きくなると長時間労働や業務上の負担などにより労働者に大きなストレスがかかるケースが多く、このような事態を未然に防ぐことを目的に、一定規模以上の事業場においては、定期的にストレスチェックを行うことが義務づけられています。
しかし、少人数の事業場でも、メンタルヘルスの不調を抱える労働者は増加傾向にあり、特に小規模事業場ではメンタルヘルス対策への取り組みが十分でない現状があります。
このため、より広い範囲でメンタルヘルス対策を推進するために、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの義務化が拡大されることになりました。

介護職は、ほかの職種と比較してストレスを感じやすい職種といわれています。
たとえば、人手不足に伴う業務負担過多、高齢者の移動介助や体位変換などの体力的な負担、利用者からの暴力や暴言などのハラスメント、同僚や利用者、その家族との人間関係の問題、労働負担に対する給与との不均衡感、将来やキャリアプランへの不安など、常態として精神的な負担を感じる機会が多いことが要因となり、ストレスが蓄積されやすくなります。
このストレスを放置してしまうと、スタッフのモチベーションや仕事でのパフォーマンスの低下、精神的な負荷による疾患などのリスクが高まり、最悪の場合は離職や休職につながる可能性があります。

このようにストレスが多い職種でありながら、厚生労働省が公表した「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、50人未満の事業所でストレスチェックを実施しているのは約60%となっており、小規模の事業場が多い介護業界でも十分な対策が進んでいない状況であると考えられます。

ストレスチェック実施の目的とメリット

ストレスチェックを実施する主な目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。
また、ストレスチェックを実施することで、次のような効果が期待できます。

労働者側のメリット
・自身のストレス状態を客観的に把握することができる
・ストレスケアを考えるきっかけになる
・「高ストレス者」の場合、医師など専門家の指導を受けられる
・労働環境の改善を求めることができる
ストレスの状態が数値化されることで、自分の状態を客観的に確認でき、早期にセルフケアを行うことが可能になります。

事業者側のメリット
介護事業場にとって、スタッフは重要な人財です。
ストレスチェックの実施結果に基づき職場環境の整備や改善を実施することで、ストレスによる退職や休職を防ぎ、事業場の安定化につながります。
・スタッフのメンタルヘルス不調を未然に防止できる
・業務上の問題点を把握することができるため、業務改善につなげられる
・ストレス過多による退職や休職を防ぎ、スタッフの定着につなげられる
・スタッフのパフォーマンス向上により、サービスの向上が期待できる

介護職に係るスタッフは、さまざまな要因によりストレスを蓄積しやすい職場環境に置かれています。
その環境のなかで、業務をこなすためには、感情を上手にコントロールすることが求められます。
自身の感情をコントロールするには、まずは自分の感情を客観視し、どのような状態であるかを把握することが重要です。
ストレスを抱えているのであれば、その原因や程度を把握することでメンタルヘルスの悪化を防ぎ、ストレスを解消することも可能になります。
ただし、このような対策を行うには個人としてだけではなく、介護事業場として継続的に取り組む必要があります。
まずはストレスチェックの実施により、各スタッフがどの程度ストレスを抱えているのかを把握しましょう。

「高ストレス」を抱えたスタッフには「医師による面談指導」の機会を設け、定期的にストレスケアの講習会や研修、セミナーを実施することでスタッフのストレス対策への意識を高めることができます。
そのほかにも「相談窓口の設置」や「メンター制度の導入」などの取り組みも有効であると考えられます。
今後のストレスチェック実施義務化に向けて、各介護事業所に合った適切なストレスケア体制を整備してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。