過去の権利関係などを調べるための『閉鎖事項証明書』とは?
不動産や企業に関する登記記録は、関連した取引を行う人にとって、とても重要な情報源となります。
登記記録を記載した登記簿には、土地の所有者の変更や会社の住所の移転といった新しい情報が記録されていきます。
更新される前の古い情報は、いずれ削除され、現在の登記簿からは見えなくなりますが、実は「閉鎖事項証明書」という形で、きちんと保存され、必要に応じて取得できるようになっています。
過去の権利関係や変遷を知ることのできる閉鎖事項証明書を活用する際の具体例や、閉鎖事項証明書の取得方法などについて解説します。
閉鎖事項証明書が必要になるシーン
「閉鎖事項証明書」は、その名の通り、すでに閉鎖された登記記録の内容を証明する書類のことです。
『閉鎖された登記記録』とは、たとえば、不動産が滅失したり、合併によって会社が消滅したりした際に、それまでの情報が「閉鎖」という形で保管されたものを指します。
まずは、不動産登記について説明します。
現在事項証明書や全部事項証明書など、不動産登記の登記事項証明書は、現在の有効な登記情報が主に記載されていますが、閉鎖事項証明書は全部事項証明書には掲載されなくなった過去の権利変動の履歴や企業の詳細な変遷などが記載されています。
一般的な不動産登記の登記事項証明書に比べて、普段はあまり活用されることのない閉鎖事項証明書ですが、特定の場面で必要になることがあります。
たとえば、不動産登記においては、土地の過去の所有者や権利関係を調査したいときに、閉鎖事項証明書を活用することがあります。
登記事項証明書がコンピューター化される前は、昔からある土地の多くは、過去の登記情報が閉鎖されており、登記事項証明書だけではその土地のすべての過去を知ることができませんでした。
そこで、土地を売買する際などに閉鎖事項証明書を取得し、前の所有者が誰で、いつからいつまで所有していたのか、過去に担保に入っていたことはないかといった情報を詳しく調べるのです。
なお、コンピューター化された以降については、これらの情報も登記事項証明書に記載されている場合があります。
また、過去に設定された抵当権が残っている場合は、登記事項証明書に記載されているため、適切に抹消されているか確認することが可能で、もし抹消されていない抵当権が残っている場合でも、対応策を講じることができます。
こうした不動産に関するトラブルを回避するために、閉鎖事項証明書は活用されることがあります。
ちなみに、金融機関から融資を受ける際には、土地の過去や変遷を明らかにするため、閉鎖事項証明書の提出を求められることがあります。
また、土地を購入する際は、土壌汚染の可能性を考えておかなければいけません。
たとえば、過去に化学工場や産廃場、ガソリンスタンドなどが建てられていないかといった、土地の素性を確認する際にも、閉鎖事項証明書を取得して確認するケースがあります。
商業・法人登記に関する場合の取得方法
前述した不動産登記に関する閉鎖事項証明書のほかに、商業・法人登記に関する閉鎖事項証明書も存在します。
商業・法人登記に関する閉鎖事項証明書は、企業の過去の姿を知るうえで非常に重要な情報源となります。
続いて、商業・法人登記に関する閉鎖事項証明書について説明します。
たとえば、会社の過去の商号や目的、役員の変遷を調べたいときに、閉鎖事項証明書が活用されます。
企業が成長していく過程で、商号(会社名)を変更したり、事業目的を追加・変更したり、役員が交代したりすることはよくあることです。
そうした情報を参照するための「履歴事項証明書」は、交付請求日から3年前の年の1月1日以降の登記事項しか記載されないため、それ以前の記録を確認するためには、閉鎖事項証明書を取得する必要があります。
また、会社が合併すると、合併により消滅する会社の登記事項証明書は閉鎖されます。
閉鎖事項証明書は、組織再編によって閉鎖された会社の登記記録を証明するものでもあり、合併前の会社の情報などを詳細に確認することができます。
閉鎖事項証明書を確認しておけば、再編の背景や各社の権利義務の承継関係などを正確に把握でき、M&Aなどにも役立てることが可能です。
さらに、解散、清算結了して登記が閉鎖されるので、すでに解散した会社についても閉鎖事項証明書を取得することができます。
その会社がどのような経緯で解散し、清算されたのか、清算人は誰だったのかといった情報を知ることができ、たとえば取引先の会社が倒産・清算した後で、その会社との取引履歴や債権債務関係を再確認する必要が生じた場合などに役立ちます。
不動産取引や法人取引など、さまざまなシーンで使われている閉鎖事項証明書ですが、取得する際には法務局の窓口か郵送もしくはオンラインで申請することになります。
法務省のシステムを利用すれば、インターネットを通じて自宅やオフィスからでも申請が可能です。
また、閉鎖事項証明書は登記情報提供サービスにより、インターネットを使用してパソコンなどの画面上で内容を確認することができます。
急ぎで内容を確認したい場合や、取得前に情報の一部を確認したい場合などに向いています。
ただし、法的な効力を持つ正式な証明書として利用する場合は、法務局やオンライン申請によって書類を発行してもらう必要があるので、注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。