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『退職金』を支給する際に気をつけたい手続きと計算方法

24.11.12
ビジネス【税務・会計】
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日本では、およそ8割の会社が退職金制度を設けています。
退職金制度とは一定の年数以上勤めた従業員が退職する際に、働いた年数や業績に応じて手当を支給する制度のことです。
この退職金を支払う際に注意しなければならないのが、税務上の手続きや会計に関する処理です。
もし、必要な処理を怠ると余計な混乱を招くことになりかねません。
退職金制度を導入している企業は理解しておきたい、退職金の税務会計について解説します。

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退職金にまつわる所得税などの税金について

法律で定められた義務ではないものの、退職金制度は多くの会社で導入されている制度の一つです。
企業規模や地域、制度の中身などによって大きく異なりますが、一般的に退職金は高額になる傾向にあります。
厚生労働省では大企業における学歴別の平均退職金額を公表しており、「令和5年賃金事情等総合調査」によれば、定年まで勤めた大学卒業者は約2,140万円、高校卒業者は約2,020万円でした。
一方、東京産業労働局の2022年度のデータによれば、中小企業の平均退職金額は、定年まで勤めた大学卒業者が約1,092万円、高校卒業者が約994万円でした。

これらの高額な退職金を取り扱う際には、行わなければならない税務上の手続きがあります。
まず、退職金を支給する際には、退職金から所得税などを差し引かなければならないため、退職金の支給対象者に必要事項を記入した「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を提出してもらいましょう。
申告書の入力用フォーマットは国税庁のホームページから入手できるので、対象者に渡しておきます。
対象者から申告書を受け取った事業者は、所得税額および復興特別所得税額、住民税額を計算し、退職金を支給する際に、金額に応じた所得税などの額を源泉徴収します。
したがって、原則、退職する対象者が確定申告をする必要はありません。
事業者は受け取った申告書を保管しておき、税務署長からの求めに応じて提出します。

退職金を支給する際には、退職所得控除額、退職所得金額、所得税額および復興特別所得税額、住民税額を計算する必要があります。

退職所得金額は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」という式で求められます。
この場合の収入金額は源泉徴収される前の金額です。
退職所得控除額は勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」という式で求められます。
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。

所得税額と復興所得税額の合計は「(退職所得金額(千円未満切捨)×税率-控除額)×1.021」という式で、住民税額は「退職所得金額(千円未満切捨)×0.1(都道府県民税0.04+市区町村民税0.06)」という式で求めることができます。
源泉徴収した所得税および復興特別所得税と住民税は、原則として支払った翌月の10日までに納めます。
また、対象者が退職した1カ月以内に、源泉徴収票・特別徴収票を作成して、対象者本人に交付しなければいけません。

対象者が退職所得申告書を提出していない場合、対象者は退職所得の20.42%の所得税および復興特別所得税と、10%の住民税が徴収されることになり、本人が確定申告を行い清算することになります。
対象者のためにも、退職所得申告書は必ず提出してもらうようにしましょう。

退職金の仕訳と支給後に必要な手続き

退職金の仕訳は積立の有無で方法が異なります。
退職金は勤続年数に応じて額が増加する場合が多いため、企業会計基準上の「引当金」の要件を満たす場合、将来の支給に備えた見積額として一定の方法で計算した金額を「退職給付引当金」として計上します。
その場合は、その事業年度の繰入額を「退職給付費用」という勘定科目を使用して各事業年度の費用として計上します。
退職金が発生した段階で、この退職給付引当金から取り崩す仕訳を行います。
ただし、退職給付引当金の計上は会計上の処理であって、税務上は損金算入が認められていません。

一方で、退職給与規程がない会社や、税法基準で決算を行なっている中小企業など、引当金を計上していない場合は、退職時に処理することになります。
そのようなケースでは「退職金」の勘定科目を使用して費用処理します。
これらの勘定科目は一般の従業員の場合で、役員に対して支給する退職金は「役員退職金」や「役員退職慰労金」といった勘定科目を使用します。
役員への退職金は、仕訳や経理処理の方法が異なるので注意しましょう。

また、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出も忘れてはいけません。
この届出書は、従業員が退職や休職、死亡などによって給与の支給を受けなくなり、特別徴収ができなくなった旨を知らせるためのもので、原則として退職した翌月の10日までに対象者の特別徴収先の市区町村に提出する必要があります。
もし届出書を提出しないでいると、特別徴収の義務が継続したままになり、市区町村から督促状などが送付されることもあります。

退職金の支給や仕訳は、さまざまな手続きや処理を行う必要があるので、計算方法や勘定科目などをよく理解したうえで進めていきましょう。
なお、会社が直接支給する退職金制度以外にも、中小企業退職金共済や、確定拠出年金など、外部機関が取り扱う退職金制度もあります。
外部の退職金制度を採用している場合は、処理の方法などが異なるので注意してください。


※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。