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患者の『デンタルIQ』を高めるために歯科医師ができること

24.02.06
業種別【歯科医業】
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歯と口の健康に対する関心の高さや意識の度合いを示す指標のことを『デンタルIQ』といいます。
デンタルIQが高い患者ほど、セルフケアを積極的に実施しており、歯や口の健康に関する知識も豊富です。
デンタルIQが向上すると、患者は歯と口の健康を守れるだけでなく、保険治療以外の自由診療も含めて、よりよい治療法を選択できるようになり、結果として満足度の高い治療を受けることにもつながります。
定期健診の増加など、歯科クリニックにとってもメリットのある、患者のデンタルIQを高める取り組みを紹介します。
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デンタルIQと『8020運動』の関係

人は年齢を重ねていくほど、歯の数が減っていくのが一般的です。
厚生労働省の調査によると、日本における歯のない人、いわゆる無歯顎者の割合は、日本は65~74歳で10%となっており、イタリアの13%やオーストリアの15%などと比べても低く、高齢者になっても自身の歯を維持している人が多いといえます。

また、日本では1989年から、国と日本歯科医師会が80歳になっても20本以上の歯を保つ『8020運動』を推進しており、1993年には8020達成者率が10.9%だったのに対し、2022年には51.6%まで増加しました。
厚生労働省が公表した『令和4年歯科疾患実態調査(概要)』によると、「過去1年の間に歯科検診を受診した人の割合」は58.0%でした。
これらの結果をふまえると、日本は決してデンタルIQが低い国ではないといえるでしょう。

しかし、歯科先進国といわれているスウェーデンでは、日本よりも歯と口の健康に対する意識が高く、65~74歳の無歯顎者率はわずか2.7%で、8020達成者率も60%を超えています。
日本では75歳以上の後期高齢者の歯の平均本数は約16本となっており、これを増やしていくことが今後の課題とされています。
そのためには、患者のデンタルIQを高めていくことが不可欠です。

日本歯科医師会の調査によれば、デンタルIQが高い人は、「フッ素入り歯磨き剤を使用する」「よく噛んで食べる」「デンタルフロスや歯間ブラシを日常的に使う」「歯ブラシは少なくとも1カ月に1回は交換する」など、日々のセルフケアの実施率が高く、定期健診の受診率も高い傾向にあります。
こうした歯と口への意識が高ければ、すぐに歯を失う可能性は低いでしょう。

デンタルIQの向上で予防歯科の重要性を認知

スウェーデンの歯科に対する意識は高く、「予防歯科先進国」「世界で最も歯科疾患が少ない国」と評価されています。
その理由は定期的に歯科医院を受診する「予防歯科」を義務化したことが大きく影響していると考えられます。

歯科疾患の治療のほとんどは対症療法で、症状が悪化し治療を続けていくと最終的には抜歯などにより、自分の歯でなくなってしまう可能性が高くなります。
まず虫歯にならないようにするためには、予防歯科の実践が必要です。
歯科医や歯科衛生士が歯科医院などで行う『プロケア(プロフェッショナルケア)』も大事ですが、患者自身の『セルフケア』も重要です。
このセルフケアの質を高めるために、デンタルIQも高めていく必要があります。

患者のデンタルIQが高ければ、歯科医師の治療方針に関する理解も深まり、自由診療も含め、よりよい治療の提案がスムーズに進むでしょう。
一方、デンタルIQが低ければ知識が足りないがゆえに、歯科医師からの提案に対し、最適な方法が何か判断することがむずかしいため、否定的な反応を示す可能性も高くなるでしょう。
たとえば虫歯治療などは、保険治療で使用するパラジウムやプラスチックよりも、自由診療のセラミックのほうが虫歯の再発リスクが低いと言われています。
患者側のデメリットをなくすためにも、来院する患者に対して、デンタルIQを高めるための施策に取り組んでいきましょう。

患者に対し、カウンセリングやデンタル指導などを実施しているクリニックは少なくありません。
そのうえでほかにも、作成した患者の歯型の模型をもとに治療の話をしたり、デジタルスキャナーで作成した口腔内のCGを見てもらったりと、独自の施策に取り組んでいるクリニックも増えています。
また、「位相差顕微鏡」という特殊な光学顕微鏡で、口腔内の細菌を患者に見てもらい、患者の意識を高めているクリニックもあります。
自分の口の中にいる細菌を確認した患者は現実を知ることで、口腔ケアの重要性を認識するでしょう。

デンタルIQの向上は、患者の健康や生活の質の向上に直結するものです。
歯科医師として、常にデンタルIQの向上を意識しながら患者と接することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。