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医療従事者への迷惑行為『ペイハラ』を防ぐには

24.02.06
業種別【医業】
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顧客から企業への理不尽なクレームや言動、迷惑行為のことを『カスタマーハラスメント(カスハラ)』といいますが、近年は医療従事者にも同様の暴言や暴力などが相次いでいます。
こうした医療従事者に対する患者やその家族からのハラスメントのことを『ペイシェントハラスメント(ペイハラ)』といいます。
もし、医院の医師やスタッフに対してペイハラが行われた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
深刻化しつつあるペイハラについて、考えていきます。
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多くの医療従事者がペイハラに遭っている

ペイシェントは患者と訳され、ペイシェントハラスメント(以下ペイハラ)は患者からの嫌がらせやいじめを意味します。

患者やその家族からの直接的な暴力はもちろん、尊厳を傷つけるような暴言や脅迫、大声での叱責、過度な要求、性的な嫌がらせ、つきまといなどの迷惑行為、業務の妨げ、意図的な設備の破壊、無断撮影、危険物の持ち込みなどは、すべてペイハラに該当します。

医療現場でペイハラの被害に遭ったという医療従事者は非常に多く、100床以上の医療機関を対象にした2019年度の調査結果では、患者やその家族から職員が身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメントを受けたという施設は、全体の85.5%にも及びました。
特に看護師に対する精神的な暴力が多いというデータもあり、なかにはメンタルヘルスの不調を訴えるなど、後遺症に悩まされる看護師も大勢います。

こうしたペイハラが起きてしまう背景には、患者側の問題と医院側の問題があります。
患者の認知症や精神障害などの疾患を要因とするペイハラのほかに、医療機関に対する過度なサービスへの期待や理解不足などが要因となって、ペイハラが引き起こされることがあります。
また、診療所や病院では、どうしても待ち時間やさまざまな手続きが発生します。
そうした患者側が不満と感じる部分に、医院側の説明不足や対応の不手際などが重なり、ペイハラにつながってしまうケースも少なくありません。

医療機関においては、ペイハラが患者と医療機関の双方の問題に起因するものだという認識のもと、患者への説明漏れがないようにマニュアルを作成したり、患者の不安や疑問を取り除くためのヒアリングを行なったりするなど、患者との信頼関係の構築に力を注ぐ必要があります。

院内掲示でペイハラへの対応を明確にする

かつてペイハラは、緊急外来や精神科などで起きることの多い問題でした。
しかし、近年は医療体制の変化により、ほぼすべての診療科や医療施設でペイハラが起きています。

スタッフを守るためにも、医療機関は患者やその家族からのペイハラを防がなくてはいけません。
そのためには、医療機関におけるルール、医療や看護への協力などについて、院内に掲示をしておくことがおすすめです。
あわせて、もしペイハラが起きた際には、退院や診療を断るなどの対応を行う場合がある旨も、はっきりと示しておきましょう。

医師法第19条では、いわゆる医師の応召義務が規定されており、正当な事由がなければ患者からの診療の求めに応じなければいけません。
正当な事由には、医師の不在や病気などによって事実上診療が不可能な場合などが該当しますが、近年はペイハラを事由とした診療拒否が認められるケースも出てきています。

診療にあたっては、医師に応召義務が規定されているように、患者やその家族にも医療従事者に協力するよう呼びかける『診療協力義務』を院内に掲示する医療機関も増えてきています。
ペイハラに該当する行為は、医療行為を妨害するものであり、診療協力義務を果たしているとはいえません。

ペイハラをそのままにしておくと、スタッフが肉体的・精神的苦痛を負い、仕事のパフォーマンスに影響が出るだけでなく、その現場を見たほかの患者から、ペイハラを行う患者の多い医療機関として、よくない印象を与えてしまう場合もあります。

診療は医療従事者と患者が協力することで成り立つものであるという認識を患者側に持ってもらい、実際に発生したペイハラに対しては、診療拒否や警察を呼ぶなど、毅然とした対応を取ることが重要です。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。