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中小企業向けの資金調達『第三者割当増資』のメリットとデメリット

23.07.25
ビジネス【税務・会計】
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企業の資金調達にはいくつかの方法があります。そのなかでも中小企業やスタートアップ企業などによく利用されているのが、第三者割当増資です。
第三者割当増資とは、株式会社が特定の第三者に新株を発行して資金を得る方法です。
この資金調達方法は手続きが比較的簡単で、迅速に資金を得られるというメリットがあります。
一方で、実施する際に注意しなければならないデメリットも存在します。
今回は、資金調達の際に知っておきたい第三者割当増資の基礎を解説します。
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第三者が引受人となる増資の方法

株式会社における資金調達は、日本政策金融公庫や銀行などの金融機関から借り入れを行う『融資』、国や自治体から給付される『補助金・助成金』、そして株式の発行により資金を調達する『増資』に大別できます。
それぞれにメリットがあり、特に増資は融資のように返済が伴わないため、会社の財務基盤の安定や信用の向上を見込めるのが魅力です。
また、補助金や助成金のように、使用用途や金額が限定されないというのも特徴の一つです。
増資は「有償増資」と「無償増資」の2つに大きく分けられます。前者は、投資者などから資本の払込みを得て新たに株式を発行し、資本金を増やします。対して後者は、投資家からの払込金を得ずに、利益剰余金や法定準備金などを資本金に組み入れます。

さらに、有償増資には「株主割当増資」「公募増資」「第三者割当増資」の3種類があり、それぞれ新株の引受人が異なります。
引受人とは、企業が発行した株式を買い取る相手先のことで、個人・法人を問いません。

有償増資について、一つずつ見ていきましょう。

株主割当増資は、既存の株主が引受人となります。
企業は、持分比率に応じて発行した新株を既存の株主に引き受けてもらうことで、資金を得られます。

公募増資は、既存の株主以外にも出資を募る方法であるため、不特定多数の引受人が新株を引き受けることになります。
しかし、広く出資を募ることで多額の資金を調達できる可能性がある一方で、新規株主が増えるため、経営の自由度が低下する恐れもあります。
また、上場会社ではない非上場会社は、公募増資を行うことは一般的にありません。

第三者割当増資は、指名した特定の相手に新株の引受人になってもらう方法です。
この引受人は既存の株主でも第三者でも構いません。
しかし、新株の発行は会社の支配権の移管などを伴う危険性があります。
そこで、第三者割当増資による引受人は、見ず知らずの第三者というよりは、自社の役員や取引先の企業、取引のある金融機関など、自社の縁故者を指定することが多い傾向にあります。
そのため、第三者割当増資は「縁故募集」や「縁故割当増資」とも呼ばれます。

事業拡大の一方で株式の希薄化の危険も

第三者割当増資は、もともと良好な関係の第三者に引受人になってもらうケースが多いため、引受人とのさらなる関係強化につながるというメリットがあります。
引受人となった相手側の企業は、新株を引き受けたことで配当金などが見込めるため、取引先の紹介や情報提供など、事業拡大に力を貸してくれるでしょう。
場合によっては相手の会社と資本業務提携を行うなど、さらなる発展が望めることもあります。

また、第三者割当増資で資金力を強化できれば対外的な信用性が高まるため、ほかの資金調達をスムーズに行える、取引を有利に進められる、などのメリットもあります。

第三者割当増資は引受人が限定されるため交渉がまとまりやすく、手続きも簡単なので、比較的短期間で資金調達を行えます。
新規事業を早く立ち上げたいスタートアップ企業などに第三者割当増資が好まれるのは、こうした理由も大きく影響しているでしょう。

一方で、第三者割当増資にはデメリットも存在します。
新しい株式を発行すれば、既存の1株あたりの株式の価値が下がります。
これを「希薄化」といいます。
株式の希薄化で利益減少を恐れる既存の株主が株式を手放し、株価が下落する可能性もあります。
ただし、第三者割当増資による株式の希薄化には、既存の株主が不利益をこうむらないように、希薄化率に応じて制限が設けられています。
一定の割合を超える第三者割当増資を行う場合は、新株の発行前にさまざまな手続きが必要です。

また、既存の株主の持ち株比率が低下することで会社のパワーバランスが変わり、意思決定に支障をきたす恐れもあります。

さらに、第三者割当増資によって資本金の額が変わるため、変更登記申請も必要で、増資を実施してから2週間以内に申請を行わなければなりません。

このように、第三者割当増資は手続きが比較的簡単といわれつつも、募集事項の決議や新株募集の申し込みなども発生し、それなりに手間はかかります。
資金調達で第三者割当増資を検討している場合は、メリットとデメリットをよく理解して進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。