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30万円未満の固定資産を一括で経費計上できる特例制度について

22.08.30
ビジネス【税務・会計】
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事業に使用する建物や車両、設備などの固定資産は、時間が経つにつれ価値が減っていきます。
そのため、取得した年だけに経費計上するのではなく、耐用年数と同等の年数をかけて費用化します。
この会計処理を『減価償却』といい、減価償却の対象となる固定資産を『減価償却資産』と呼びます。
青色申告法人である中小企業者等の場合、この減価償却資産のなかで30万円に満たない額で取得した減価償却資産は、『中小企業者等の少額減価償却資産の特例』により、取得した年度に損金として一括計上できます。
特例の概要や期限、適用の範囲について説明します。
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減価償却費を求めるための計算方法

中小企業者等の少額減価償却資産の特例は適用される期限が決められており、これまでは2006年4月1日から2022年3月31日までとされてきました。
しかし、2022年の税制改正で、特例の期限は2024年3月31日まで延長されました。
この期間に青色申告法人である中小企業者等が取得した30万円未満の減価償却資産については、特例によって取得した価額を一括して損金として計上できるようになります。

では、特例を使用した場合と通常の減価償却で処理する場合では、どのくらい計上できる金額に差が出るものなのでしょうか。

減価償却費を計算で求めるには、減価償却資産の耐用年数を知らなければいけません。
減価償却資産は品目ごとに使用可能な期間である『法定耐用年数』が定められており、法定耐用年数に沿って減価償却の期間も決まります。
また、減価償却費の計算方法は、計上する損金の額が毎年同額になる『定額法』と、初めの年ほど多めに計上して年を経るごとに計上の額が少額になる『定率法』の2種類があります。

たとえば、ある中小企業が事業に使う耐用年数4年の機械を25万円で購入したとします。
定率法と定額法はどちらも減価償却費を求めるための償却率が、耐用年数ごとに決まっています。
この償却率を使用した以下の計算式により、減価償却費を求めることができます。

定率法:定率法償却率×未償却残高(購入年度は取得価額)=減価償却費
定額法:定額法の償却率×取得価額=減価償却費

定率法については、毎年減価償却していくなかで『償却保証額(資産の取得価額×その減価償却資産の耐用年数に応じた保証率)』を下回った年は、定率法償却率ではなく『改定償却率』という別の償却率を使用して計算します。
ちなみに、上記の例の耐用年数4年の減価償却資産における定額法の償却率は0.25、定率法の償却率は0.50、改定償却率は1.00です。

この各種償却率を使用し、25万円で取得した耐用年数4年の機械を定率法で減価償却すると12万5,000円、定額法では6万2,500円をその年度に経費計上できることになります。
そして、残りの未償却残高を来年度以降の複数年で計上していきます。


特例の対象となる法人と適用される範囲

一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使用した場合では、取得金額の25万円を経費として一括で計上できます
つまり、そのまま25万円が損金計上できるため、特例を使用した場合のほうがその事業年度の節税になります。

また、年度末に30万円未満の減価償却資産を取得した場合、通常の減価償却では、年度末の1カ月分しか減価償却費を計上できません。
しかし、特例を使用すれば年度末でも全額を計上することが可能です。

この特例が適用されるのは、資本金の額か出資金の額が1億円以下の中小企業等に限られます
中小企業者等であっても、従業員の数が1,000人を超えている場合は適用されないため注意が必要です。

また、適用の対象となる減価償却資産については金額の上限が決められており、30万円未満の減価償却資産を合計して300万円までとなっています。
もし、事業年度が1年に満たない場合は、300万円を12で割ったうえで、その事業年度の月数を掛けた金額が上限になります。

この特例を利用するためには、特例の適用を受ける金額について会計処理し、確定申告の際、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告する必要があります

多少の手間はかかりますが、特例の対象となるのは建物や車両、設備などのほか、ソフトウェアや特許権、商標権などの無形減価償却資産も含まれます。
また、中古資産も含まれます。

会社を経営するうえで、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の要件にあてはまる減価償却資産は多くあります。
これから30万円未満の備品を調達する予定のある中小企業は、特例の活用を検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。