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“就職差別”にならないための採用時の選考基準

22.04.12
ビジネス【人的資源】
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国は、採用において、企業にできるだけ公正な選考採用をするように求めています。
たとえば、本人の適性や資質とは無関係な事柄(応募者の性別、年齢、出身地、家族構成など)によって、採用・不採用を決めてはならないといった考え方が示されています。
一方で、学歴や職歴などは本人の責任の範疇であるとされ、選考の際の判断材料にすることが認められています。
では、通常使用しない読み方であったり、特別な意図を反映していたりという、いわゆるキラキラネームで採用・不採用を判断するのは、“就職差別”になるのでしょうか。
今回は、採用時に選考基準として適切である事例と不適切な事例を解説するとともに、キラキラネームの応募者をどのように扱うべきかを考えます。
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人権を尊重した公正な採用基準とは?

厚生労働省では、『公正な採用選考の基本』を明確にしており、企業側には

・応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力に基づいて行うこと

の2点を基本的な考え方として実施するように求めています。
公正な採用選考を行う、とは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということです。
『採用選考時に配慮すべき事項』としては、次の2つの項目が挙げられています。
次のような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で質問したりすることは、就職差別につながるおそれがあります。

<本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
●本籍や出生地に関すること
●家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
●住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
●生活環境や家庭環境などに関すること

<本来自由であるべき事項>
●宗教に関すること
●支持政党に関すること
●人生観、生活信条に関すること
●尊敬する人物に関すること
●思想に関すること
●労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
●購読新聞、雑誌、愛読書などに関すること

この基準に照らし合わせると、たとえば、面接で家族構成を聞いたり、戸籍謄本等を要求したりすることは、就職差別につながる可能性があります。

また、以下のような方法で選考を実施すると、公正さが失われるおそれがあります。

<採用選考の方法>
●身元調査などの実施 (現住所の略図は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があるため)
●合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

しかし、企業には『採用の自由』も認められており、雇用する人数や募集方法などは、自由に決めてよいことになっています。
そして、公正な採用基準に沿っていれば、応募者が持つどの要素を重視して採用・不採用を決めるのかも自由ということになります。
つまり、学歴に重きをおいても、身体的能力に比重をおいても、それは企業の採用の自由であり、問題になることはありません。


名前で採用・不採用を判断するのはOK?

では、採用におけるキラキラネームは、どのような取り扱いをすべきでしょうか。

まず、いわゆるキラキラネームとは、どのようなものなのか説明します。
キラキラネームとは、世間的にあまり見られない名前のことで、読み方が難解であったり、外来語やキャラクター名が当て字で使われていたりするなどの特徴があります
1990年代から目立ち始め、近年は急激に増加していることから、採用の応募者のなかにキラキラネームを持つ人がいることも多くなりました。

公正な採用選考の基本と採用の自由の原則に照らし合わせると、キラキラネームを採用・不採用の判断基準にしたとしても、問題ないことになります。
しかし、当然、どんな名前であろうとも、その名前を持つ応募者本人の責任ではありません。

したがって、本人に責任のない事項ではあるものの、不採用にしたからといって就職差別の範疇でもない、というあいまいな判断になります。
最終的には、キラキラネームの応募者を採用するかどうかは、企業側の判断に任されることになります

ただし、採用後に、キラキラネームを理由とした差別や不当な扱いは許されません

たとえば、キラキラネームの従業員に対して賃金を低く設定したり、昇進をさせなかったりすると、違反となります。

インターネット上で話題に登ることも多いキラキラネームですが、そのなかには「採用で不利になる」という意見もあります。
やや古い資料になりますが、2013年にライフネット生命が、新卒採用を実施する組織の採用関係者を対象に行った(有効回答1,000名)調査によると、キラキラネームと古風な名前を比較した際に、「両者に全く差はない」と答えた回答者の割合は、82.2%になりました。
しかし、「キラキラネームが有利(計)」は3.3%とわずかで、「古風な名前が有利(計)」が14.5%という意見が相対的に多くなった、と同社はレポートしています。

いかなる場合においても、不当な差別のない採用活動を行っていきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。