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中小企業再編を進める『経営資源集約化税制』とは?

21.03.09
ビジネス【税務・会計】
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近年、後継者が見つからずに廃業する中小企業が増加しています。
政府はさまざまな政策で事業承継をサポートするための方策を打ち出し、2021年度の税制改正には中小企業の再編を促すためのM&Aにおける優遇税制が盛り込まれました。
そのなかの一つ、『経営資源集約化税制』では、M&Aに伴う設備の投資額を一部控除する制度、M&Aによって従業員の給与支給額を引き上げた場合に増加額の一部を控除する制度、M&A実施後のリスクに備える準備金を損金として算入できる制度の三つが新設される予定です。
今回は、この経営資源集約化税制について説明します。
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中小企業の事業承継をサポートするために

新型コロナウイルス感染拡大(以下、新型コロナ)の影響により、2020年には約5万件もの中小企業が休廃業・解散に追い込まれました。
実のところ、ここ数年は後継者不足によって事業承継できずに廃業する中小企業が急増しており、今回の新型コロナが追い打ちをかけた形となっています。

政府はこれまで、日本の産業を支える中小企業の廃業を防ぐために、さまざまな事業承継促進のための取り組みを行ってきました。

第三者との事業承継をマッチングさせる事業引継ぎ支援センターの設立や、専門家によって事業承継をサポートする事業承継ネットワーク、さらには事業承継補助金や中小企業経営力強化支援ファンド、経営資源引継ぎ補助金、トライアル実証事業など、2015年度には二つしかなかった事業承継のための取り組みが、2020年度には六つに増えており、政府が中小企業の事業継承促進に力を入れていることがわかります。

2021年度の税制改正では、年々増加しつつある中小企業のM&Aを後押しするための優遇税制として、経営資源集約化税制が予定されています。
この税制は、M&Aを実施するリスクを低減させたり、税負担を軽くしたりするもので、企業側がM&Aなどの再編計画を提出し、認定されることで初めて優遇措置を受けられます
現時点でどのような認定制度になるかは確定していませんが、計画を立案することが条件の一つになることは間違いありません。


経営資源集約化税制の3つの制度

経営資源集約化税制には3つの制度の新設が予定されており、その1つである『M&Aの効果を高める設備投資減税』は、M&A後にシステムの統合や新たな設備投資などを行う際に投資額の10%を税額控除、または全額を即時償却するというものです。
資本金3,000万円を超える中小企業に関しては、税額控除率が7%になります。

たとえば、自社と買収先の企業が持っていた技術を組み合わせた新商品や新サービスについて、それらを開発・製造する際の設備投資や、原材料の仕入れなどに係る共通システムの導入などの際に、この税制は大きな効果を発揮します。

次に、M&A後の雇用を維持するための『雇用確保を促す税制』もあります。
M&Aに伴って従業員の給与支給総額を前年比で2.5%以上引き上げた場合に給与等支給総額の増加額の25%を、前年比で1.5%以上引き上げた場合には給与等支給総額の増加額の15%を控除するというものです。

最後に、M&Aの実施後に発生するリスクを軽減するための『準備金制度』の創設は、買収にかかった投資額の70%以下の金額を5年間の据置期間付の準備金として計上できる制度です。
たとえば、M&Aにかかった1,000万円を準備金としてその年度に損金算入すると、据置期間後から均等取崩として毎年200万円ずつ、益金算入されるというわけです。

確かにM&Aには、トラブルがつきものとはいえます。
買収後に買収先が粉飾決算を行っており、売掛金が回収できなかったり、残業代の未払いによる元社員の訴訟案件や労務トラブルが発覚したりするなどのリスクは予想できます。
準備金制度は、そんなリスクに備えるための制度です。

経済産業省は、2021年の通常国会でこれらの中小企業の経営強化のための法改正案の提出を目指しています。
コロナ禍においては、従来のビジネスモデルでは立ち行かないケースも増えてきています。
後継者のいない事業者はもとより、M&Aによって事業の転換などを考えている事業者にとっても、重要な税制改正となるため、今後の動向に注目する必要がありそうです。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。