有限会社 サステイナブル・デザイン

携帯代、車代は? 個人開業医が計上できる経費の種類

19.12.03
業種別【医業】
dummy
開業してクリニックを運営している個人医院の場合、プライベートと仕事の境がつきにくいケースも多いものです。
携帯電話ひとつとっても、仕事の電話をかけることもあれば、プライベートの電話をかけることもあります。
この携帯電話の通信費は経費として計上できるのでしょうか。
『経費』の考え方についておさらいしておきましょう。
dummy
経費として認められるもの・認められないもの

開業医などの個人事業主の場合は、事業所得が課税対象となります。
開業医の事業所得は、一定の要件を満たす場合は概算経費により算出することもできますが、原則的には『総収入金額-必要経費』から計算されます。
この必要経費は、業務上必要とされるものでなければいけません。
それはどのように考えればよいかというと、基本的には『事業に関連して生じた費用であるかどうか』が基準となります。

・必要経費として認められるもの
医療機器のリース料、薬剤、クリニックの賃料や水道光熱費、事業資金の借入金の利息、医師会の会費、業務に関連するセミナーの受講費や研修費、スタッフの給与、スタッフに提供する手土産代やお茶代などの福利厚生費、往診車など

・必要経費として認められないもの
医師の国民年金保険料や生命保険料、住民税や所得税、自宅の賃料、自家用車の代金など

勤務医から開業医になった人が混同しがちなのが、自身の国民年金保険料ではないでしょうか。
個人事業主の場合は経費にはならないので注意しましょう。
また、生命保険についても同様です。
医療法人の経営者などの生命保険料は経費にすることができるものもありますが、個人事業主の場合は経費にはできません。
ただ、確定申告のときに社会保険料控除や生命保険料控除として所得控除の対象になるため、併せて知っておきましょう。


仕事とプライベートで兼用している場合

クリニックと自宅が別の場所にある場合は問題ありませんが、クリニックと自宅を兼用している場合、水道光熱費や通信費など、一括で請求されるようなものについては、どのように経費計上をすればよいのでしょうか。
このときに基準となるものの一つが床面積です。
たとえば建物全体の床面積が100㎡、そのうちクリニックの床面積が40㎡で自宅の床面積が60㎡であるとしたならば、経費も4:6で計算するのです。
電気代が月に5万円としたならば、そのうちの40%にあたる2万円がクリニックの経費として計上できるというわけです。
しかし、床面積では計算できないものもあります。
たとえば冒頭で述べた、仕事とプライベートで兼用している携帯電話の通信費は、床面積の割合を適用するのは違和感が出てきます。
このような場合は、1週間のうち仕事が5日、プライベートが2日として5:2で按分するという方法もあります。
このように、自宅とクリニックが兼用の場合や、仕事とプライベートのどちらでも使うようなものに関する費用の場合には、基準を決めて割り振り、経費計上することになります。


医師同士のゴルフ代や飲食代は?

開業医がクリニックの経費計上で悩みやすいものが、医師同士のゴルフ代や飲食代、往診車などではないでしょうか。
ポイントは『事業に関する費用』といえるかどうかです。
同じ医師でも、仕事上のつながりは一切なく、ゴルフや飲食の場で仕事の話は一切しないようなケースでは、ゴルフ代や飲食代を必要経費に含めることは難しいかもしれません。
同様に、自家用車兼往診車としてスポーツカーを購入するなど、趣味性の高いものは『事業に関する費用』であると認められにくいものです。

経費計上したものについて税務署から調査が入り、「これは経費とは認められません」という判断をされてしまうと、所得税の納税額などに影響してきます。
また、悪質と判断されるとペナルティが科せられる可能性もあります。
必要経費であると主張するために、領収書の摘要欄などは自分で書かない、クリニックの業務に関連して発生した費用であることを示す書類を添付して保管しておくなど、事業と関連していることを証明できるものを用意しておくことが重要です。

開業して間もないときは、不慣れなことや、わからないことも多いでしょう。
しかし、きちんと経費を計上することは、節税対策にもなります。
早く慣れるためにも、普段から「何が経費になって、何が経費にならないのか」を意識して生活するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。