有限会社 サステイナブル・デザイン

利用者増加中の『医療用ウィッグ』。取り扱う際の基礎知識

19.10.01
業種別【美容業】
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がん患者をはじめ、利用者が増えている『医療用ウィッグ』。
そのため最近では、1日数百円程度の料金で医療用ウィッグを貸し出すレンタル事業も行われています。
そこで、美容業界大手の取り組みを例にあげ、ファッションウィッグと医療用ウィッグの違い、利用者増加によるウィッグ市場の今後について考えていきます。
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医療用ウィッグに設けられた基準とは?

ウィッグは毛髪の編み方やベースに使用される生地の種類、人毛と人工毛の割合などによって、その品質が大きく変わってきます。
各メーカーが最も注力するのは自然な髪に見えるための工夫ですが、それは医療用もファッション用も同じです。
そのため、かつては“各社の販売方法”だけで医療用かファッション用かに区別されていました。
しかし、医療用ウィッグとして売られた粗悪な品が、利用者の頭皮を傷つけるというケースが起きたことから、2015年にJIS(日本工業規格)は、医療用ウィッグに対する基準を設けました。
それ以来、医療用ウィッグに関しては、誰でも安全に使えるよう、アレルギー反応が起こらないか、生地が直接着用するためにふさわしいものかなどがチェックされるようになりました。


病と闘う女性の心を救う医療用ウィッグ

医療用ウィッグの利用者は、圧倒的に女性の割合が多くなっています。
たとえば、乳がん患者は抗がん剤治療の副作用として、脱毛は避けられません。
脱けてしまう毛の量は副作用の程度によって違うとはいえ、なかにはほぼすべての髪が抜けてしまうケースもあります。
鏡でそんな自分の姿を見たとき、気持ちが落ち込んでしまう女性は多いものです。
そこで、少しでも明るく元気になるために、医療用ウィッグを手に取るのです。

こうしたなか、美容産業大手A社では、働きながらがん治療に臨む女性用の医療用ウィッグを発売しています。
同社のウィッグは、職場に合ったスタイルのものと、自宅で使うためのものを2枚1組にしたものです。
乳がんを患う女性のなかには、自宅であっても脱毛した姿を身近な人に見せたくないという人もいます。
小さい子どもがいる女性の場合は特に、見た目で子どもにショックを与えたくないという理由もあるようです。
同社の医療用ウィッグは、JISの基準を満たしているだけでなく、製作過程で地球環境と労働環境にも配慮しています。
さらに、使用する毛は、人道的な問題から発展途上国などで貧しい女性から安価に買い取られ流通していることが多い、本物の人毛は使っていません。


医療用の取り扱いで知っておきたいこと

初めて医療用ウィッグを利用する女性は、どんなものを選べばいいのか、わかりません。
美容室が医療用ウィッグを販売するためには、まずはそういった利用者に適切なアドバイスができるように知識を持つ必要があります。

まずJISの内容を理解しましょう。
直接頭皮に当たる部分のネットやスキンベース、インナーキャップなどに、粗悪な素材を使用していた場合、アレルギー反応が出やすくなります。
病気のため免疫力が下がっている利用者にとっては、大きな問題につながりかねません。
そのため、皮膚刺激性や、接着剤などに含まれる化学物質ホルムアルデヒドの量を測定し、医療用としての基準をクリアしているかを判定しています。
さらには、汗や摩擦、洗濯や日光に当たることによる抵抗性を調べる試験も、細かく行います。
経済産業省は、2015年のプレスリリースで、医療用ウィッグにJIS S9623を制定した背景や内容を発表しているので、確認してみましょう。

次に、美容室側が知っておきたいのは、医療用ウィッグには健康保険は適用されないのですが、地域と条件によっては医療費控除に該当する場合もあるということです。
医療費控除とは、『支払った医療費や医療器具等の実質負担額が、国が定めた金額を超えた場合に、その超えた税額の一部が国から還付される』というものです。
治療に必要なもの、つまり医師による診療や治療の一環として、直接的に必要なものと認められれば、医療用ウィッグは医療費控除の対象になるというわけです。
また、一部の地域では、医療用ウィッグに対する補助金や助成金を出しているケースもあります
ビジネスを展開する地域での実情を調べてみるといいでしょう。

美容室はお客に医療用ウィッグを販売しておしまいではありません。
より自然なヘアスタイルに近づけるために、お客に医療用ウィッグを着用してもらい、カットしていくことを提案してみましょう。
また、治療が終わり、髪が生えてくると、医療用ウィッグが合わなくなってきます。
微調整を行うために、定期的に美容室に通ってもらってはいかがでしょうか。

病と闘う女性の心を明るく元気にしてくれる“医療用ウィッグ”。
美容業界で果たすその役割は、今後ますます広がっていきそうです。


※本記事の記載内容は、2019年10月現在の法令・情報等に基づいています。