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誤解を受けやすい部下との接し方とは?

18.03.30
ビジネス【人的資源】
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こんな経験をしたことはないだろうか? 

自分では普通に接しているつもりなのに、同僚から「何か怒っている?」と聞かれる。 
部下はいつもどおりにしているかもしれないが、何となく顔色をうかがってしまう。 
いずれのケースも、その場にはぎこちない空気が流れてしまうだろう。 

誤解を受けやすいタイプの人間は、どんな職場にもいるものだ。
だからといって、敬遠するわけにはいかない。
上司であれば、部下を組織のなかに取り込んでいく必要がある。 

今回は世界でもっとも誤解を受けやすいと言われるスポーツ選手と、彼を率いるチームの監督の話をしよう。
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憶測で質問攻めにあった選手を助けた監督の言葉 

ブラジルのサッカー界に、ネイマールという選手がいる。
日本でもテレビに出演したことがあるため、名前を聞いたことがある人も多いだろう。 

彼は昨年夏、フランスのパリ・サンジェルマンFCへ移籍。 
その際、パリ・サンジェルマンFCから前所属クラブのスペインのバルセロナに、なんと約290億円もの移籍金が支払われたという。 

現在、世界のサッカー界はテレビ放映権料を原資に潤っており、一人の選手を獲得するために何十億円もの金額がやり取りされる。
それにしても、ネイマールの価値はケタ違いだ。 
そのため、移籍にあたって様々な憶測が飛び交った。 

推定年俸は49億円高だから、お金目当てと言われるのは避けがたい。 
さらに、「バルセロナには、アルゼンチン代表のスーパースター『メッシ』がいて、ネイマールは王様になれない。だから移籍した」とも言われた。 
また、新天地では、ペナルティキックを誰が蹴るのかを巡って、チームメイトと言い争いになった。 
パリ・サンジェルマンにはネイマールと同じブラジル人選手が多いため、「彼らの後押しも受けてネイマールが自分のエゴを通している」との報道が熱を帯びていったのだ。 

ネイマールは、四六時中、記者に追いかけられ、彼らが決めつけた“王様になりたい、わがままな男”というイメージに沿う質問を浴びせられる。 
たとえ「誰かを不快にさせるために移籍したわけじゃない!」と突っぱねても、記者の質問は止まらなかった。 

そんなときだった。 
ネイマールの記者会見に同席したブラジル代表のチッチ監督が、マイクを口もとに引き寄せたのだ。 

「私は、彼と1年半仕事をしてきたが、チームに尽くすとても忠実な選手だ。彼は素晴らしく広い心の持ち主だよ」 

この言葉を聞いたネイマールは、涙を浮かべ、その頬に薄い線が伝わった。 


大切なのは、相手を理解する気持ち 

「完璧な人間などいない。どんな人間だって、少しばかりの過ちはおかすものだ」とチッチ監督は話した。 
指揮官のその言葉は、会社組織にも当てはまるだろう。 

チッチ監督は56歳で、ネイマールは26歳。
親子のような年の差そのままに、彼はネイマールに優しい視線を注ぎ、その行動を注視。
必要なら手を差し伸べている。 
些細なことでもコミュニケーションを欠かさず、メディアが作り上げたイメージにとらわれず、自分の物差しでネイマールを理解する。 
その思いがネイマールの心に届き、彼らは信頼関係を構築できているのだ。 

誰だってひとりでは生きていけない。
誤解をされやすいタイプや仲間と打ち解けにくいタイプでも、助けが必要な場面はある。 
そういうタイプだからこそ、助けなければならない場面がある。 

人間関係は、小さな配慮の積み重ねでできている。 
マネジメントを担う立場では特に、見た目や噂に振り回されることなく、部下の真の魅力を見極める力が重要だ。 
仮に誤解を受けやすい部下がいるならば、チッチ監督がネイマールにしたように、噂を正し、周囲に真実を示すことも必要になってくるだろう。 

ちなみに、チッチ監督の言葉に涙したネイマールは、笑顔を取り戻してこう言った。 
「これこそがチーム力であり、僕らの結束なんだ」と。 



企業成長のための人的資源熟考

●プロフィール● 
戸塚 啓(とつか・けい) 
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。