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管理者? 労働者? 医療法人における院長の役割

23.11.07
ビジネス【法律豆知識】
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医療機関における院長とは、一般企業でいう社長の位置にいる人を表します。
院長という役職は医療法に直接規定されているわけではなく、法的には管理医師のことを指します。
そして、この管理医師は、原則として理事に選任されなくてはならず、病院や診療所を管理する義務を負います。
他方で管理医師は、診療所においては実際に診療行為にも従事していることも多く、労働者のような立場にもあるといえます。
今回は、医療法人の院長こと管理医師に関する法的規制について説明します。
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管理医師は医療法人の理事でなければならない

管理医師は医療法上、医療法人の理事にならなくてはなりません。
その意味では経営陣の一角を担っているということになります。
当然、理事会が招集されれば、そこに参加し、業務執行に関する意思決定を行います。
一方で管理医師は、診療所で診療も行っている場合も多く、一般的に診療を拒否する自由はなく、勤務時間が決められていたり、仕事内容の指示に従わなければならなかったりすることも多いです。
つまり管理医師は、経営者と労働者という、相反する法的地位を併有していることになります。

院長と呼ばれる管理医師の、この矛盾した地位をどう理解するのかはとても重要です。
なぜなら、管理医師が労働者ということになれば、労働法の適用があり、残業代請求をすることも可能となるからです。
管理医師はもとの給与額が高額ですし、労働時間も長時間にわたります。
残業代も高額になる傾向があることから、管理医師のステータスは医療法人にとって無視できない問題であるといえるでしょう。

管理医師を労働者と評価する基準

管理医師は、医療法人との間で雇用契約を締結している場合があります。
この場合は、いわゆる従業員兼理事となり、管理医師を労働者と認定しやすいといえます。
仮に、雇用契約書が締結されていない場合は、管理医師が
(1)使用者の指揮監督下で労働に従事しているかどうか
(2)その労働の対価として賃金(報酬)を得ているか
を基準として労働者性を判断します。

そして、(1)の指揮監督下にあるか否かは、概ね、以下の諸要素を総合考慮して判断されます。
ア.仕事の依頼・指示に対して応じるか拒否するかの自由があるかどうか
イ.仕事の遂行方法や時間配分について指示を受けているかどうか
ウ.仕事の開始・終了時間や勤務場所等が指定される形の拘束性があるかどうか
エ.本人に代わって他者が仕事を行うことができるかどうか

その結果、管理医師が労働者と認定された場合、管理医師も各労働法の適用を受けることになり、残業代請求等も可能となります。

管理医師が管理監督者であったとしたら?

では、仮に、管理医師が労働者と認定されたとしても、いわゆる管理監督者である場合はどうでしょうか。
その場合、管理医師は残業代の一部を請求できません。
医療法人にとっては、管理医師が管理監督者といえるかどうかも重要になってきます。

管理監督者といえるか否かは、概ね、以下の要素を満たす必要があります。
ア.職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にあること
イ.部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課・機密事項に接していること
ウ.管理職手当などの特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること
エ.自己の出退勤をみずから決定し得る権限があること

前述の通り、医療法人の管理医師は、理事にならなくてはなりません。
そのため、管理監督者として認められやすいといえるでしょう。
 
このように医療法上の管理医師は、労働者か管理監督者のどちらに認定されるかによって収入に大きな違いがでてくることがあります。
したがって医療法人にとってだけでなく、管理医師にとっても、「院長」の役割や立場を明確にすることは非常に重要です。
管理医師として雇用の契約があるのかどうか、雇用の契約がなくても労働者に該当するのかどうか、明確にしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。