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医師への行政処分『戒告』『医業停止』『免許取消』とは?

23.10.03
業種別【医業】
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医師や歯科医師が違法行為や不適当な行為を行うと、行政処分を受けることがあります。
行政処分とは、法律に基づいて国の行政機関が対象者に義務を命じたり、権利を剥奪したりする処分のことです。
医師に対しての行政処分は3種類あり、『戒告』『医業停止』『免許取消』の順で処分の内容が重くなります。
では、どのような行為でこれらの行政処分を受けることになるのでしょうか。
行政処分についての基礎や判断基準について、説明します。
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行政処分を受ける可能性のある医師の行為

医師として医療行為を行うには、医師国家試験に合格して、厚生労働大臣から医師免許を受ける必要があります。
しかし、医師法第4条では、以下のいずれかに該当する者には免許を与えてはならないと定められています。

(1)心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
(2)麻薬、大麻又はあへんの中毒者
(3)罰金以上の刑に処せられた者
(4)医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

もし、すでに免許を取得しているにもかかわらず、上記の(1)~(4)に該当する者は医師法第7条に基づき、行政処分を受けることになります。
また、(1)~(4)に加え、医師としての品位を損なう行為を行なった者に対しても行政処分が行われます。

医師への行政処分というと医療事故など、医療に関連するものを連想するかもしれません。
しかしそれだけではなく、医師は患者の命や体を預かる立場であり、他人の命や体を軽んじてはいけないという考え方から、たとえば、暴行や放火、飲酒運転など、医療の現場とは無関係の場所で犯罪行為をした者に対しても、行政処分が行われます。
また、利益を得るために不正な診療報酬請求を行なった場合や、本来医師が負うべき義務を放棄した場合なども行政処分の対象になります。
原則として、行政処分は違法行為や不当行為など、医師に求められる職業倫理に反する行為を行った者に対して行われるということです。

行政処分の内容は、個々の案件ごとに、厚生労働省の審議会の一つである医道審議会が倫理上の観点や国民に与える影響などについて審議し、厚生労働大臣によって決定されます。
ほとんどの行政処分は、刑事処分が確定した後に刑事処分の量刑を参考に決められています。
その一方で、過去には医療ミスを繰り返した医師に対して、刑事処分を待たずに行政処分が行われたこともありました。

行政処分の種類と、処分に納得できない場合の対応

医師への行政処分は3種類あり、もっとも軽いものが医師の不法行為などについて、再発を防止するように戒める戒告です。
戒告を受けても、医師免許を取り消されたり、医療行為などの制限を受けたりすることはありません。

しかし、その次に重い医業停止になると、医業を行うことが一定期間禁止されてしまいます。
停止期間は最長で3年となっており、期間を過ぎると再び医業を行うことができます。
この処分で対象となるのは、あくまで医業なので、停止期間中でも医院の事務や受付など、医業以外の業務に携わることは可能です。

また、戒告と医業停止の処分を受けた者に関しては、医師の倫理や知識についての再教育研修を受けるように命じられることがあります。
研修を受けないと資格制限や罰金などが科せられることがあるため、注意が必要です。

そして、もっとも重い行政処分の免許取消は、その名の通り、医師免許が取り消される処分です。
医師の資格が剥奪されるので、今後医業に携わることができなくなります。
免許が取り消されても一定の要件を満たしたうえで再免許の申請を行えば、再び医業を行うことは可能です。
しかし、再免許の申請ができるようになるまでは長期間を要するうえに、再免許の可否は厚生労働大臣が決めるため、申請したからといって、必ずしも再免許が交付されるわけではありません。

もし、これらの行政処分が違法または不当である場合は、行政不服審査法に基づき、厚生労働大臣に対して、審査請求を行うことができます。
審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から3カ月以内に行う必要があります。

また、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を行うという方法もあります。
取消訴訟は行政処分の取り消しを求めるための訴訟で、裁判所が処分の妥当性を判断します。
行政処分を受けた医師は、審査請求か取消訴訟のどちらかを選ぶことができますが、行政処分の内容やタイミングなどによって、最適な方法は異なります。

人の命を預かる医師の違法行為や不正行為に対する行政処分は、決して甘くありません。
また、日々心掛けて生活するのはもちろんのこと、知らぬうちに処分対象になってしまっているなんてことのないよう注意が必要です。

万が一、行政処分を受けてしまい、その内容に納得できなければ、まず医師の行政処分に詳しい弁護士などに相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。