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『見せ金』で資本金を多く見せることの違法性と大きなリスク

23.03.28
ビジネス【企業法務】
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会社設立の際には、事業資金の元手となる資本金を設定する必要があります。
資本金は、投資家や株主から出資を募ることもありますが、会社を設立したい起業家が自己資金を投じることが多いでしょう。
資本金は1円から設定することができますが、資本金の額は会社の信頼にも影響するため、『見せ金』を使って資本金を多く見せるケースがあります。
見せ金とは、自己資金以外の資金をよそから借り入れて資本金に加算する行為のことで、違法行為にあたります。
そこで今回は、見せ金が違法である法的根拠と、使用した場合のリスクについて説明します。
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会社設立時に資本金をいくらに設定すべき?

会社設立時に資本金をいくらにするかは、起業家にとって悩ましい問題です。
国税庁の『令和2年度分 会社標本調査』によれば、全国の約280万の法人のうち、資本金が1,000万円以下の会社は8割以上を占めています。
さらに細かく見ていくと、資本金100万円以下の会社が約50万社、100万円超~200万円以下が約7万5,000社、200万円超~300万円以下が約114万社となっています。
業種にもよりますが、これらの統計からは中小企業であれば資本金は100~300万円程度が一般的といえそうです。

2006年の『会社法』の改正によって最低資本金制度が撤廃され、資本金1円からでも会社を設立できるようになりました。
しかし、資本金は対外的な信用度を示すものでもあるため、実際に1円で起業する人は多くありません。
資本金が少な過ぎると、金融機関から倒産のリスクが高いと見なされ、融資を受けづらくなることがあるからです。

また、事業によっては、許認可を取得する際に資本金(自己資金や基準資産)の最低ラインが決められているものもあり、要件で定められた資本金を用意できない場合は、許認可を取得できません。
いずれの業種も業務範囲に定めがありますが、たとえば、一般建設業の場合は自己資金が500万円以上と定められています。

このような理由から、資本金を多く見せるために、見せ金を使う起業家もいます。
会社設立時には、法人の口座に資本金を入金しますが、このときに入金先となる払込取扱金融機関以外から借り入れ、会社設立後に返済する資金のことを見せ金と呼びます。
たとえば、資本金を500万円にしたいが自己資金が200万円しかなく、300万円を借り入れて、自己資金と合わせて払込取扱金融機関に入金した後、借り入れた300万円を引き出して返済するといった操作を行います。


見せ金を使ったことで生じるさまざまなリスク

見せ金は、金融機関や債権者を欺く行為であり、違法です。場合によっては、虚偽の申し立てと見なされ、刑法157条の『公正証書原本不実記載等罪』に問われ、刑事罰として5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
会社法第52条の2でも『出資の履行を仮装した場合の責任等』が定められており、起業家(発起人)が責任を負うことになります。
もし、見せ金を使って資本金を多く見せた場合、発起人は見せ金に相当する金銭を会社に支払う義務があり、支払えない場合は株主の権利を行使できなくなります。

さらに、見せ金を用いたことで金融機関から融資を受けられなくなる可能性もあります。
金融機関は融資審査のために発起人や出資をしている取締役などの通帳確認を行いますが、履歴をたどることで資本金を巡る金銭の動きが把握できるので、見せ金を資本金に加えていたことはすぐにわかってしまいます。
見せ金であることが判明すれば、融資審査は通りません。

また、見せ金は会社設立後に借入先に返済しなければなりません。
多くの場合、『役員貸付金』として見せ金に相当する金銭を発起人に戻し、発起人は調達先に返済しますが、発起人は会社から見せ金に相当する金銭を借りた状態になります。
この貸付金を返済せずに借りたままでいると、貸付金は発起人への報酬とみなされ、発起人には所得税が課せられることになります。

このように見せ金は法律で禁止されているうえに、税金面でもリスクがあります。
自己資金だけでは資本金が不足する場合は、所有している株や不動産などの資産を売却したり、親族から出資してもらったりなど、資金調達方法について考えましょう。
取引先がそこまで多くなければ、資本金を低く設定し直すことを検討するのもよいかもしれません。
まずは、企業サポートなどを専門にしている税理士や公認会計士などに相談し、自己資金に照らして適正な資本金を設定するよう検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年3月現在の法令・情報等に基づいています。