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従業員が交通事故を起こしたら、会社としてどう対応すべき?

20.12.08
ビジネス【企業法務】
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業務で社用車を使用する場合、当然、交通事故のリスクが伴います。
もし従業員が交通事故を起こしてしまった場合、会社はどのような立場で責任を負うのでしょうか。
また、社用車を使用していたかどうかにかかわらず、従業員が交通事故の被害にあう可能性はもちろんあります。
こういった場合、会社にはどのような対応が求められるのでしょうか。
今回は、従業員が交通事故にあったときの対応について、ケースごとに説明していきます。
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従業員が社用車で交通事故を起こした場合

雇用している従業員が、会社の自動車を運転して取引先に向かう途中に交通事故を起こしてしまった場合、会社が負う責任は以下の二つです。

(1)使用者責任(民法715条)
自動車を運転していた従業員は、被害者に対して不法行為責任を負い、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。
そして、従業員が不法行為責任を負う場合に、その行為が会社の『事業の執行について』なされたときは、会社は、使用者責任を負い、被害者に生じた損害を賠償する責任を負うことになります(民法715条)。
なお、会社は、その従業員の『選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき』は責任を負わないとされていますが(同条ただし書)、免責は容易には認められません。

(2)運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)
さらに、人身事故の場合は、会社が『自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)』に該当すると、会社は、運行供用者責任を負い、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(自動車損害賠償保障法3条)。

会社が運行供用者に該当するか否かは、

●自動車の運行を支配する立場にあるか(運行支配)
●自動車の運行により利益を得る立場にあるか(運行利益)

という観点から判断されます。

従業員が、会社所有の自動車で業務中に交通事故を起こした場合は、会社は運行供用者に該当し、損害賠償責任を負うことになります。
一方、従業員がマイカー通勤中に交通事故を起こした場合は、会社の責任は原則として否定されるでしょう。

会社経営者は、上記のような損害賠償リスクを軽減させるため、従業員に交通安全の意識を喚起するための研修を実施したり、従業員の過労などを防ぐために、適切な労務環境の確保に努めたりすることが大切です。


従業員が交通事故の被害にあった場合

(1)従業員が業務中または通勤中に交通事故にあった場合
この場合は、労災保険が適用されます。
労災保険と自賠責保険のどちらを優先させるかは、労働者の希望で選択できますので、労働者が労災保険申請を希望すれば、会社はその手続きに応じる必要があります。
厚生労働省の通達では、『原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるように取り扱うこと』とされていることから、労働基準監督署は自賠責保険を優先するよう指導します。
しかし、労災保険は労働者の過失の有無にかかわらず給付され、過失相殺が適用されないため、労働者に過失がある場合は両方を申請することになるでしょう。

(2)従業員が業務とは無関係に交通事故にあった場合
この場合、労災保険は適用されませんが、怪我により会社を休まなければならなくなった場合には、その対応が必要となります。
まず、健康保険から傷病手当金の支給が受けられますので、会社は、その支給手続きを行うことになります。
また、休職する必要がある場合は就業規則等に則して対応し、仮に規定がない場合は労働者とよく協議する必要があります。
休職が長期化する場合は、症状や職場復帰の可能性について、医師の意見も参考にしながら労働者と十分に話し合いましょう。

従業員が交通事故にあった場合、ケースに応じて対応が異なります。
いざというときに困らないよう、ケースごとの対応を整理しておくとよいでしょう。
また、万が一従業員が事故にあったときのために、会社への報告はどのようにするのかなど、必要な事柄をあらかじめ従業員にも周知しておくことが望ましいといえます。


※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。