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個人のスマホを業務に使用する『BYOD』のメリット・デメリット

25.07.08
ビジネス【人的資源】
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今やスマートフォン(以下スマホ)は人々の生活に必要不可欠なツールとなりました。
近年、ビジネスの現場において、従業員が個人で所有するスマホを業務に活用する「BYOD(Bring Your Own Device)」という取り組みが注目を集めています。
BYODは、従業員が慣れた自分のスマホを業務に利用できるため、スムーズな業務遂行や生産性の向上につながる一方で、セキュリティ対策や管理体制の構築など、企業が考慮すべき点も少なくありません。
導入を考えている企業に向けて、BYODのメリットとデメリットを中心に解説します。

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スマホの普及に伴い注目を集めるBYOD

スマホの個人保有数は年々増加の一途をたどり、2024年には携帯電話所有者の内、スマホを所有している人の割合が97%に達したというデータがあります。
また、スマホはビジネスパーソンにとっても必須のツールです。
連絡手段としてはもちろん、情報収集、スケジュール管理、アプリケーションの利用など、多岐にわたる業務をスマホ1台で対応する人も数多くいます。

こうした背景もあり、従業員が個人で所有しているスマホを業務に活用する「BYOD」という取り組みが注目を集めています。
実は以前から、アメリカの企業などで導入されてきたBYODですが、本格的に注目を集めるようになったのはスマホの高性能化と普及が進んだ最近です。
かつては、会社から支給されるモバイルツールといえば、携帯電話やPHSが主流でしたが、スマホの登場により、個人の所有するスマホが業務に必要な機能を十分に満たすようになりました。

日本においても、働き方改革やコスト削減といった企業の課題解決策の一つとして、BYODへの関心が高まっており、特に柔軟な働き方やリモートワークを推進する企業を中心に、BYODの導入が進みつつあります。

そんなBYODの最大のメリットは、業務効率の向上です。
従業員は普段から使い慣れた自分のスマホを利用できるため、新しいデバイスの操作を覚える手間が省け、スムーズに業務に取り組むことができます。
個人の好みに合わせたカスタマイズが可能なので、作業効率の向上にもつながるでしょう。

また、業務に個人のスマホを使用するため、企業は端末の購入費用や維持費用を削減できるという利点もあります。
通常は社用のスマホを従業員の数だけ用意しなければならず、それだけでかなりのコストがかかってしまいます。

従業員にとっても、社用と私用の2台持ちを避けることができますし、自分好みのデバイスを業務に利用できることは、モチベーションアップになり、仕事の満足度向上も期待できます。

セキュリティリスクと導入の際の注意点

さまざまなメリットのあるBYODですが、一方で、導入に慎重な企業も依然として多く存在しています。
BYODを導入している企業は、2018年時点で10%ほどという総務省の調査結果もあります。

BYODの導入において、最も懸念されるのがセキュリティリスクです。
個人所有のスマホは、業務用のセキュリティ対策が十分に施されていない場合があり、マルウェア感染や情報漏洩のリスクも低くはありません。
また、紛失や盗難のリスクも考慮する必要があります。

次に、管理の複雑化への懸念です。
機種やOS、バージョンが異なる多種多様なデバイスを管理する必要があるため、IT部門の負担が増加する可能性があります。
セキュリティポリシーの適用やソフトウェアのアップデートなどを個々のデバイスに対して行う必要があり、管理が煩雑になってしまいます。

また、古い機種を使用している従業員と最新機種を使用している従業員との間で、業務効率に差が生じる可能性もありますし、公私の線引きがあいまいになることもリスクといえます。

こうしたデメリットを理解したうえで、導入には慎重な検討と周到な準備が必要です。
まず、BYODには明確なポリシーとガイドラインの策定が不可欠です。
利用可能なデバイスの範囲、セキュリティ要件、業務利用と私的利用の区分、紛失・盗難時の対応などを明確に定めましょう。

適切なセキュリティ対策の導入も必要になります。
MDM(Mobile Device Management)などの管理ツールを導入し、デバイスの一元管理、セキュリティポリシーの適用、リモートロックやワイプなどの機能実装を行うことが重要です。
また、従業員に対するセキュリティ教育を徹底し、セキュリティ意識の向上を図る必要があります。

さらに、サポート体制の整備や、費用負担に関するルールの明確化、従業員への周知なども欠かせません。
BYODは、適切に導入することで、コスト削減や業務効率化、従業員の満足度向上につながる可能性がありますが、セキュリティリスクなどの課題が多いことも理解しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。