さんだん會計事務所

人事担当者が内定について注意しておきたいこと

23.09.12
ビジネス【人的資源】
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内定とは、採用試験などを経て、雇用が決まった採用者と企業の間で労働条件などに合意し、労働契約が締結された状態をいいます。
一般的には、企業が送付する採用条件通知書をもって、「内定が出た」と表現することもあります。
企業が内定を出してから就労するまでには期間を要するため、この間に内定者が内定を辞退しないようにするためのアフターフォローが重要になります。
また、逆に業績の悪化などによってやむなく内定取り消しを行う場合にも注意が必要です。
内定取り消しはケースによって法令違反になる場合もあります。
採用担当者に向けて、内定を出す際に気をつけたいポイントなどを解説します。
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内定を出した後は労働条件を明示する

経団連は『採用選考に関する指針』により、企業に対して学生などの採用内定日の遵守を求めており、現在、多くの企業が10月1日以降に卒業・修了予定者への内定を出しています。
企業が採用試験などのプロセスを経て選んだ採用者に内定の連絡をするのが、10月~11月頃になります。

内定について連絡した後、企業は内定通知書を発行して、内定者に送付します。
この内定通知書は、内定者に内定したことを正式に伝えるための書類であり、企業によっては内定者に対して、労働契約の成立を示すためのものでもあります。

労働基準法15条では、労働契約を締結する際に、使用者は労働者に賃金や労働時間、就業場所などの労働条件を明示しなければならないとされています。
しかし、卒業・修了予定者に労働条件を明示するタイミングは企業によってさまざまです。
内定通知書と併せて労働条件通知書を送付するケースもあれば、入社日に交付した雇用契約書に労働条件を記載するケースもあります。

一般的に多いといわれているのは、労働条件を記載した内定通知書と併せて内定承諾書もしくは入社承諾書を送るケースです。
必要事項を記入した承諾書を内定者に送り返してもらい、入社の意思を確認します。

ただし、承諾書を送る前に、内定者から『内定辞退』の連絡が来ることもあります。
内定辞退とは、文字通り内定者が内定を辞退する意思表示であり、労働者に認められた権利でもあります。
内定辞退を受けた採用担当者は、感情的にならず、辞退を了承した旨や選考を受けてくれたお礼を伝えましょう。

企業の内定取り消しは認められない

内定辞退は、民法627条1項に定められた労働契約の解約権の行使に該当するため、2週間前に告知すればいつでも契約を解約することが認められています。
すでに雇用契約を結んでいたとしても、企業側は引き止めることができないうえに、よほど悪質な場合を除いて、内定辞退による損害賠償請求も認められないことがほとんどです。

内定辞退に至る理由は、「内定者にとって優先順位の高い別の会社から内定が出た」という理由が多いとされています。
しかし、「選考プロセスで悪い印象を抱いた」「内定後の対応が悪かった」など、採用した企業側に要因があることも少なくありません。
新卒入社の場合、内定を出してから入社までの期間が長く、不安を抱いてしまう内定者も多いようです。そのため、よく考えた末に内定を辞退してしまうケースもあります。
企業側は面談の機会を設けたり、懇親会や交流会を開いたりといったアフターフォローを行うことが大切です。
ただし、企業からの参加の強制はハラスメント行為にあたる可能性があります。参加するか否かは内定者に委ねましょう。
また、職場や仕事に慣れさせるために、内定者をアルバイトとして雇用して、卒業前から働いてもらうという企業もあります。

それでも内定から入社までの過程において、内定辞退はどうしても発生するものです。
内定辞退が発生することを前提とした採用スケジュールを組んでおく必要があります。

内定者の内定辞退は法律によって認められていますが、逆に企業側の『内定取り消し』は正当な事由がなければ、認められることはありません。
原則として、内定通知書を発行した後の内定取り消しは、労働契約法第16条に定められた解雇権の乱用に該当するため、無効になるとされています。

内定取り消しが認められるのは、内定者が提出書類に虚偽の記載を行っていた場合や、会社の信用を落とすような不法行為を行った場合などです。
「ほかの候補者が条件に合致するため」や「内定後の態度が気に入らない」などの理由で、内定取り消しが認められることはありません。

また、業績悪化による内定取り消しも、原則として認められるのはむずかしく、企業は経営状況の悪化を予見できなかった責任を追及される可能性があります。

過去には、正当な理由なく内定を取り消した企業が裁判によって損害賠償金を支払ったケースもあります。
また、内定取り消しは解雇と同義なので、30日前の予告もしくは解雇予告手当を支払う必要があります。
会社都合による内定取り消しが認められるには、解雇と同じく客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが条件になります。
やむを得ない事情でどうしても内定取り消しを行うのであれば、条件を満たしているか、確認しておくことが大切です。

以上、人事担当者は内定について注意すべき点を把握し、内定者に誠実に対応しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。