さんだん會計事務所

スタートアップを助ける『オープンイノベーション促進税制』とは

22.07.12
ビジネス【税務・会計】
dummy
『オープンイノベーション促進税制』は、生産性の向上や新規事業の開拓などを図るために、出資企業とスタートアップ企業の協働を促進させる目的で2020年に創設されました。
オープンイノベーションの動きを加速させるため、2022年度の税制改正では対象の拡充を行ったうえで、期間の延長が行われています。
今回は、2022年度の税制改正のポイントや、税制の適用を受けるための要件、申請までのフローを紹介します。
dummy
オープンイノベーションとは何か?

市場の変化が激しい現代において、改革や刷新(イノベーション)を達成することは必須であるといわれています。
特に最近では、コロナ禍によって社会環境やビジネス環境が大きく変化したことを受け、新たな製品開発や市場の開拓や技術革新に力を入れている企業は少なくありません。

イノベーションには大きく分けて2つあり、まずひとつ目が、社内の技術や人材を活用し、イノベーションを起こす『クローズドイノベーション』です。
多くの企業がクローズドイノベーションで成功を収めています。
しかし、クローズドイノベーションは自社の限られた経営資源を割くことになるため、目標達成前にリソース不足に陥りやすく、先入観や社会的な変化に対応できないという問題点から競争力不足も指摘されてきました。

一方で、積極的に外部の技術や人材などを取り入れることをオープンイノベーションといいます。
オープンイノベーションは、他社の技術や人材、ノウハウを取り入れることによって新しいアイデアが生まれやすくなり、社会的な環境変化にも対応しやすいというメリットがあります。

日本企業はクローズドイノベーションが主流でしたが、新たな価値を創造するために、オープンイノベーションに取り組む企業も増えてきました。

そして、2020年度の税制改正で、日本企業のオープンイノベーションを促進するために、オープンイノベーション促進税制が創設されました。


オープンイノベーション促進税制の概要

オープンイノベーション促進税制は、一定期間内に、法人やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が、スタートアップ企業との協働により生産性の向上や新たな事業の開拓(オープンイノベーション)をすることを目的に、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得した場合、その株式の取得価額の25%を課税所得から控除するという制度です。

2022年度の税制改正では、オープンイノベーション促進税制について、対象の拡充と期間の延長が行われました。
まず、期間が2022年3月31日から2年間延長され、2024年3月31日までに変更されました
また、対象については、出資を受ける側のスタートアップ企業側の要件が拡充されました
これまで、スタートアップ企業として申請できるのは設立10年未満の非上場企業に限られていましたが、改正後は、売上高研究開発費比率10%以上かつ赤字企業であれば、設立の日以後15年未満であっても対象になります。

一方、出資する側の法人や、出資額についての要件に変更はありません。
出資法人は、青色申告書を提出しており、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指していることが要件になります。

出資額に関しては、一定の額が必要になります。
1件あたりのスタートアップ企業への出資額(株式の取得価額)が、大企業で1億円以上、中小企業で1,000万円以上でなければいけません。
また、海外のスタートアップ企業へ出資する場合は、一律1件あたり5億円以上が必要です。
出資内容についても、純投資目的ではなく、一定期間以上の株式保有を予定していることが要件になります。
保有期間についても改正が行われ、出資日が2022年3月31日までの場合は5年以上、改正後の2022年4月1日以降の場合は3年以上に短縮されます。

この税制の適用を受けるためには、スタートアップ企業への出資を行ったあと、出資を行った証明書の交付を、その年度の出資に関する資料と併せて、経済産業省に申請します。
経済産業大臣から証明書が交付されたら、その証明書と共に、税務申告を行いましょう。
ちなみに、出資が要件に適合しているか不明な場合は、経済産業省に事前相談することもできます。

オープンイノベーションは、ヘルスケアやバイオ、宇宙関連などの分野で特に注目されてきましたが、それ以外の分野でも、今後、さらなる活性化が進むと予想されています。
自社の成長のためにも、オープンイノベーション促進税制を活用したスタートアップ企業との協業を考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年7月現在の法令・情報等に基づいています。