さんだん會計事務所

従業員が退職代行業者を立ててきたら?

22.03.29
ビジネス【企業法務】
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退職代行業者とは、社員に代わって、会社に退職の意思を伝える『退職代行サービス』を提供する業者のことです。
退職代行サービスは、会社に何らかの問題があり、簡単に退職できない社員のニーズに応える形で2017年頃から増加し、メディアで取り上げられるなど大きな注目を集めています。
退職代行サービスを提供しているのは主に弁護士、労働組合、一般事業者です。
しかし、一般の退職代行業者から連絡があった場合は、交渉に応じずに済むケースもあります。
もし、退職代行サービスから連絡がきたら、企業はどのように対応したらよいのか解説します。
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退職代行サービスを提供する事業者を確認

労働者には退職の自由があり、退職に関して雇用者側から制限を受けることはありません。
期間の定めのない労働契約(無期雇用契約)では、退職の申し入れを行ってから2週間後に退職することができます。
期間の定めのある労働契約(有期雇用契約)は、原則的に契約期間満了まで退職はできませんが、賃金の未払いや劣悪な労働環境など、やむをえない事由がある場合は、契約期間の途中でも退職することが認められています。

これは、退職代行サービスを利用しても特に変わらず、企業側は退職者から委任された退職代行業者からの申し入れを拒否することはできません

ただし、退職代行業者が弁護士、労働組合、一般事業者のどの立場なのかによって、取るべき対応が変わってきます。
弁護士が退職代行を行っている場合は、弁護士が退職する社員の代理人となるため、企業側は退職日の決定や、業務の引き継ぎ、貸与物の返還などの手続きを弁護士と進めることができます
その他、社会保険の資格喪失や離職票、秘密保持契約書などの必要書類の各種手続き、未払いの賃金や損害賠償請求にまつわる法的な交渉なども代理人である弁護士と行うことが可能です。
そして、これらはすべて法律業務であり弁護士にしか行うことが許されていません。

一方、弁護士資格を持っていない者が、報酬を得る目的で法律業務を行うと違法になります
したがって、一般事業者の退職代行サービスの場合、事業者は退職者の「退職したい」という意思を会社側に伝えることしかできません。
それ以上の手続きや交渉などは法律業務であるため、行うと非弁行為となるのです。

また、労働組合も弁護士ではありませんが、団体交渉権を持っているため、企業側と退職に関する交渉を行うことが可能です。
労働組合が主催する退職代行サービスは弁護士や社労士、税理士などがバックアップに入っていることも多いので、そうした場合は、退職者の代理人として、法的な内容を含んだ話を進めることが可能です。

これらを踏まえると、事業者はまず、退職代行業者から連絡が来たら、最初に、相手が弁護士や労働組合なのか、それとも一般事業者なのか、退職代行業者の権限を確認しましょう
さらに、退職が本人の意思なのかどうかも確認する必要があります
本人からの委任状や退職の意思が確認できない場合、退職手続きを進めることはできません。
その旨をはっきり伝えましょう。
退職が本人の意思であることが確認できて、さらに、退職代行業者が弁護士や労働組合であれば、退職を認める旨や、退職日、引き継ぎなどを記した回答書を作成し、退職代行業者に送付します。

では、一般事業者が退職に関する交渉をしてきたら、どのように対処すべきでしょうか。
退職代行業者が一般事業者の場合、手続きや交渉が非弁行為となるため、企業側は交渉には応じられない旨を伝えます
その場合、退職者本人と直接やり取りを希望するなど、代案を示すようにします。
もし、やり取りがうまく進まずに滞ってしまうようであれば、労働問題に詳しい弁護士などに相談するのも一つの方法です。

場合によっては、「不当な扱いがある」などの理由で退職者から損害賠償請求を起こされてしまう可能性があります。
できるだけ早めの対応を心がけましょう。

そもそも退職者が退職代行サービスを利用するということは、背景に、「退職したい」と言い出しづらい空気があったということです。
たとえば長時間労働が常態化していたり、パワハラやセクハラが行われているなど、根深い問題を抱えた企業であるケースがほとんどです。
そうした事実が社外に広まれば、会社の評判や信頼を落とすことにつながります。
また、退職者と直接のやり取りができないため、退職までに手間や時間もかかってしまいます。
本来であれば、退職者から直接、退職の意思を伝えてもらえる関係性を築いていることが理想的です。

もし、社員が退職代行サービスを使ってきた場合には、問題があるのではないかと、省みることも大切です。
職場環境における問題の把握と改善に努め、退職代行サービスに頼る必要なく円満に退職してもらえるような環境づくりを心がけていきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。