さんだん會計事務所

『パートタイム・有期雇用労働法』における“説明義務”のポイント

20.11.24
ビジネス【労働法】
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働き方改革関連法の改正を受けて、2020年4月から、大企業を対象とした『パートタイム・有期雇用労働法』が施行されました。
この法律は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止し、事業者に短時間・有期雇用労働者の求めに応じた説明義務を課すもので、いわゆる『同一労働同一賃金』の実現に向けた法改正です。
中小企業への適用は2021年4月1日からですが、事前に説明する内容を整理しておくためにも、『パートタイム・有期雇用労働法』について知っておきましょう。
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法改正によって強化された説明義務とは?

通常、事業者が労働者を雇用する際は、正規雇用労働者として雇用するか、非正規雇用労働者として雇用するかを選ぶことになります。
非正規雇用労働者とは、いわゆるパートタイマーやアルバイト、嘱託社員や契約期間が定められた契約社員、臨時雇用者、派遣労働者などが該当します。

総務省の労働力調査によれば、2019年の役員を除く雇用者における非正規の職員・従業員の割合は38.2%にもなり、その割合が増え続けていることがわかっています。

『パートタイム・有期雇用労働法』は、このような状況を鑑みて、非正規雇用労働者の雇用管理改善のために、2020年4月から施行されました。
同じ企業の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすことを目的として、『待遇差の禁止』や『行政による事業者への指導・助言、紛争解決手続きの整備』などが定められています。

そして、同時に『非正規雇用労働者に対する待遇に関する説明義務の強化』も盛り込まれました。
この説明義務とは、パートタイマーやアルバイト、契約社員や派遣社員が、正社員との待遇差について説明を求めることができ、事業者は求めがあった場合にその内容や理由の説明をしなければいけない義務のことをいいます。

改正前も、パートや派遣社員に対して、雇い入れ時の待遇内容の説明義務はありましたが、正社員との待遇差の内容や理由に関しての説明義務は規定されていませんでした。
また、有期雇用の労働者においては、雇い入れ時の待遇内容も、正社員との待遇差の内容や理由に関しても、説明義務はありませんでした。

しかし、この改正により、雇い入れ時や待遇差について労働者から説明を求められた場合、また待遇決定に際しての考慮事項に関しても説明義務が盛り込まれました。
事業者は労働者からの求めに応じて、これらの説明義務を果たさなくてはならないのです。


比較対象を決め、具体的な説明を行う

では、非正規雇用労働者から待遇差の内容や理由に関する説明を求められたら、何をすればよいのでしょうか。
その場合には、まず、その労働者との比較対象を決めます。
基本的には、説明を求めてきた人と『職務の内容』および『配置の変更の範囲』が同一の労働者を比較対象にします。
該当する人物がいない場合は、どちらかの条件が同じ労働者か、職務の内容がもっとも近いと考えられる正社員を選びましょう

比較対象となる正社員を選定したあとは、待遇差の内容と理由を説明していきます。

説明するのは、まず、対象者と非正規雇用労働者の間で待遇の決定基準に違いがあるということです。
待遇の決定基準については、賃金の支給基準を説明します。
そして、その基準が客観的に見て合理的である理由を『職務の内容・配置の変更の範囲』などの事情に基づいて具体的に説明していきます。

ここで待遇差の正当性を説明できないのであれば、そもそも『正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止』に抵触してしまうため、待遇差の是正を行う必要が出てきます。
あくまで、「こうした理由で待遇差がある」と、合理的に説明できることが重要です。

説明にあたっては、非正規雇用労働者が理解できるように就業規則や賃金の規定などを記した資料を用意し、しっかりと理解してもらえるまで丁寧に説明しましょう。

また、あらかじめ質問されそうなことを想定して、説明を記した文書を用意しておくのも効果的です。

正社員に比べて労働時間や職務の内容が多様である非正規雇用労働者は、その労働条件が不明確になりやすいことから、正社員と待遇が違う理由がわからず、不満を抱くことがあります。
そのような不満を解消し、不合理な待遇差の是正につなげていくためにも、いつでも待遇差の説明義務を果たせるようにしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年11月現在の法令・情報等に基づいています。