さんだん會計事務所

あなたの会社は大丈夫? 源泉徴収“する・しない”の基準とは

19.12.19
ビジネス【税務・会計】
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会社や個人事業主は、人を雇って給与を支払ったり、委託事業者に報酬を支払ったりする際に、その額に応じた所得税と復興特別所得税を差し引くことになっています。 
差し引いた分は、会社や個人事業主が、原則として給与や報酬を支払った月の翌月の10日までに国に納めなければいけません。 
これを『源泉徴収』といい、人を雇用している会社や事業主は源泉徴収を行う義務を負いますが、なかには例外も存在します。 
今回は、源泉徴収の義務を負う場合と、負わない場合についてご説明します。
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源泉徴収の仕組みと未徴収・納付遅延の場合とは

給与を受け取る者についても、原則としては、毎年、1月1日から12月31日までに発生した収入にかかる税金を計算した上で、翌年の3月15日までに確定申告を行い、税務署に納税するよう定められています。
しかし、給与を受け取る側が一斉に確定申告を行うのは税務署としても現実的ではなく、また、それぞれが漏れやミスなく納税することも容易ではありません。
そこで、給与を支払う側が代わりに税金分をあらかじめ差し引き、各従業員から差し引いた分をまとめて納税する仕組みが『源泉徴収』です。

国としては、会社側が従業員の分の税金をまとめて払ってくれるので、安定した税収を得ることができますし、確実に所得税を徴収できるというメリットがあります。
一方で、従業員側も、面倒な確定申告を行わずに済むという利点があります。

会社や学校、官公庁、社団法人や財団法人、協同組合など、給与の支払いが発生する団体や個人事業主を『源泉徴収義務者』と呼びます。

源泉徴収をせずにいると、納付すべき源泉所得税額の10%が『不納付加算税』として課税され、さらに納付が遅れると日数に応じた『延滞税』もかかってしまいます。
ただし、不納付加算税については免除や減免があります。
不納付加算税が5,000円未満の場合や、過去1年間で延滞がなく、かつ、納付期限の翌日から1カ月以内に納付した場合は免除となります。
また、税務署からの告知を受ける前に自主的に納付した場合には、不納付加算税が5%に減免されるので、源泉徴収を忘れていることに気づいたら、早めに納税しましょう。


源泉徴収をする必要がないケースもある

人を雇用する企業や個人事業主であっても、源泉徴収の必要がない場合があります。
従業員が給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出しており、なおかつ、支払う給与額(社会保険料控除後の金額)が月額8万8,000円未満の場合です。
この場合、源泉徴収すべき税金がないので、必然的に源泉徴収を行う必要がなくなります。

『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』は、扶養親族に関する情報を事業主に知らせ、源泉徴収税額を決めるための書類です。
従業員からこの書類を提出してもらっていない場合、給与額が月額8万8,000円未満であっても源泉徴収すべき税金が生じるので、注意しましょう。

また、常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人は、源泉徴収の義務がないため、所得税を引く必要がありません。
その代わり、給与を損金算入することもできなくなります。
税法上、家事使用人への支払いは事業にかかわる労働の対価ではなく、『お小遣い』のような個人的な支出としての位置づけになるため、『経費』にはできないというわけです。
しかし、本人には所得税の納税義務が発生するため、家事使用人が確定申告を行わなくてはなりません。

ちなみに、法律的には『家事使用人』は明確ではありません。
『介護ヘルパー』や『家庭教師』『ベビーシッター』などは似た領分の仕事ですが、『家事使用人』とはいえません。
『家事使用人』に該当するのは、いわゆる『家政婦』と考えられています。

さらに、給与や退職金を支払う側でない個人が、弁護士や税理士などに支払う報酬についても、源泉徴収は必要ありません。
たとえば、給与所得者が裁判のために弁護士を雇ったとしても、その報酬から源泉徴収する必要はないということです。

一方、給与等の支払いがなく源泉徴収義務者に該当しなくても、源泉徴収をしなければならないという例外もあります。
たとえば、バーやキャバレーの経営者が、そこで働いているものの雇用契約を結んでいないホステスなどに報酬や料金を支払う場合は、その報酬等から源泉徴収を行わなければいけません。
同じく、ホテルや旅館、飲食店などで行われる宴会やパーティーにバンケットホステスやコンパニオンを派遣する業者も、雇用契約がなくても、ホステスやコンパニオンに支払う報酬や料金から源泉徴収を行います。

このように、状況によっては、人を雇用していても源泉徴収の必要がない場合や、逆に源泉徴収義務者でなくても源泉徴収を行わなければならない場合があります。
自社の従業員や関係者に関して、今一度、源泉徴収の必要の有無を確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。