税理士法人大沢会計事務所

事業承継の際には『青色申告承認申請書』の提出を忘れずに!

24.04.09
ビジネス【税務・会計】
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個人事業主が亡くなり、相続人が事業を承継する際に忘れずに行なっておきたいのが『青色申告承認申請書』の提出です。
特別控除や赤字の繰り越しなどの節税メリットが受けられる青色申告制度ですが、事業を相続したからといって、自動的に青色申告の適用が引き継がれるものではありません。
事業承継をした相続人が青色申告の適用を受けるには、税務署に青色申告承認申請書を提出する必要があります。
個人事業主から事業を相続する際における、青色申告承認申請書の提出期限などについて解説します。
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節税メリットのある青色申告者になるには

個人事業主などの事業所得がある人や、不動産所得や山林所得のある人は青色申告か白色申告のどちらかで確定申告を行います。
青色申告を選ぶと、最高で65万円の特別控除や、生計を一にする配偶者や親族の給与を経費にできる『青色事業専従者給与の特例』、純損失の繰越し控除や純損失の繰戻しによる還付など、さまざまな節税メリットがあります。

新たに青色申告の適用を受けるためには、原則その年の3月15日までに『青色申告承認申請書』を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
もし、期日までに提出が間に合わなければ、その年の所得分は青色申告によるメリットは受けられず、白色申告で確定申告を行うことになります。

確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、原則翌年の2月16日~3月15日までに行う必要があります。たとえば、2024年分の所得に関しては2025年3月15日が確定申告の期日となり、この2024年分の確定申告を青色申告で行う場合には、2024年3月15日までに青色申告承認申請書を提出しなければいけません。
なお、新規事業を始めた時期が1月16日以後の場合は、事業開始日から2カ月以内に提出する必要があります。

一度、青色申告の申請を行い承認されれば、以降の年は申請しなくても、継続して『青色申告者』となります。
しかし、被相続人から事業を引き継いだ場合は、たとえ被相続人が青色申告者だったとしても、青色申告の適用は引き継がれず、相続人が新規で青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

相続が発生すると、相続人は死亡届の提出など、死亡したことを届ける各種手続きを行う必要があり、遺産の分割協議や相続税の申告といったさまざまな対応に追われます。
もし、被相続人が青色申告者として事業を行なっており、相続人がその事業を承継する場合には、青色申告承認申請書の提出も忘れずに行いましょう。
被相続人の死亡日(相続人が相続の開始を知った日)によっては、申請書の提出期限が短くなることもあるので、注意が必要です。

ちなみに、事業を承継する相続人がすでに個人事業主で青色申告者の場合は、あらためて青色申告承認申請をする必要はありません。
また、承継する事業を会社(法人)で行なっていて亡くなった人が会社(法人)の経営者の場合、会社(法人)が引続き青色申告法人となりますので、個人で青色申告承認申請をする必要はありません。

被相続人の死亡日によって異なる提出の期限

事業を行なっていた被相続人が青色申告者で、その年の1月1日から8月31日に死亡した場合、相続人は被相続人が亡くなった日から4カ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。
ただし、相続人が青色申告者になることを希望していなければ、提出する必要はありません。

また、被相続人に収入があった場合、相続人は1月1日から被相続人の死亡日までの所得について所得税額を計算して税務署に申告する必要がある場合があります。
これを『準確定申告』といいます。
準確定申告の期限は、青色申告承認申請書を提出する期限と同じ、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内です。
青色申告者になることを希望するのであれば、準確定申告と一緒に青色申告承認申請書を提出するようにしましょう。

一方、被相続人の死亡日がその年の9月1日から10月31日の場合は、その年の12月31日まで、死亡日がその年の11月1日から12月31日の場合は、翌年の2月15日までに青色申告承認申請書を提出しなければいけません。
もし、被相続人が10月31日に亡くなった場合は、提出までの猶予がわずか2カ月しかありません。
事業承継した相続人が青色申告者になるには、被相続人の死亡日をまず確認し、迅速に青色申告承認申請書を提出しましょう。

また、被相続人が白色申告者で、相続人が新たに青色申告者になる場合は、原則、通常の青色申告の申請と同様に、その年の3月15日までに申請する必要があり、その年の1月16日以後に事業を承継した場合は、業務を承継した日から2カ月以内に青色申告承認申請書を提出します。

ちなみに、事業を引き継いだものの、途中で廃業などによって青色申告を取りやめる場合は、取りやめようとする年の翌年3月15日までに『所得税の青色申告の取りやめ届出書』を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

青色申告承認申請書や所得税の青色申告の取りやめ届出書などは、税務署や国税庁のホームページで入手できます。
個人事業主から事業を引き継ぐ場合、青色申告承認申請書の提出など事業に関する煩雑な相続の手続きが発生します。
期限が設けられている手続きもあるため、必要に応じて専門家の力なども借りながら適切に進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。