税理士法人大沢会計事務所

国際的な企業間の物品売買取引のときに気を付けるべきこと

24.02.13
ビジネス【法律豆知識】
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グローバル社会の進展により、私たちは海外事業者の販売する物を日常的に購入することができるようになりました。
企業間では、より一層海外企業との取引が当たり前になってきています。
そこで今回は、意外と知られていない『国際物品売買契約に関する国際連合条約』(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods。以下、CISG)について、その概要を説明します。
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CISGが適用されるとどうなる?

CISGは条約であるため、条約を結んだ国にのみ適用されます。
日本も2008年7月に加入書を提出し、2009年8月1日からCISGの効力の下にあります。

CISGを締結した国同士の場合も当然、適用されます。
そのため、たとえば日本と米国のそれぞれの企業が物品売買契約を締結する場合、適用排除しない限り、CISGが適用されます。

また、CISGが適用される国の準拠法で契約をする場合も、適用排除しない限りCISGが締結されます。
つまり日本はCISGを結んでいるため、仮に条約を締結していない国の企業と日本法を準拠法として物品売買契約を締結する場合には、適用を排除しない限りCISGが適用されるということです。

では、CISGが適用されるとどうなるのでしょうか。
たとえば、企業Aが企業Bの販売する物を100万円で買いたいと注文をし、企業Bが120万円で売りたいといった場合、日本法によれば、企業Aが返事を忘れていると契約が成立しません。
しかし、CISGによると、企業Aが返事を忘れていてすぐに120万円では購入不可能と伝えなかった場合、120万円での売買契約が成立してしまいます。

これが何を意味するのかというと、最後に発送した人が勝つ(返事をしないままにしている企業が負ける)ということです。
この1点だけでも、日本法が適用されている場合と比べて、留意すべき点が違うことに気づくでしょう。

また、CISGに関する判例や学説は外国のものがほとんどであるため、調査にも手間がかかります。
そこで、海外企業との取引における日本企業の基本的な立場としては、契約の際に日本法を準拠法としつつ、CISGの適用を排除しておくのが無難だといえるでしょう。

CISGの存在意義を正しく理解しておく

ここで、英文契約における日本法を準拠法とする文例と、CISGの適用排除例およびその和訳を紹介します。

【This Agreement shall be governed as to all matters, including validity,
construction and performance, by and under the laws of Japan.
The parties agree to exclude the application of the United Nations Convention on Contracts for the International Sales of Goods (1980).】

「本契約は、有効性、解釈および履行を含むすべての事項について、日本法に準拠するものとする。当事者は、国際物品売買契約に関する国際連合条約(1980年)の適用を排除することに合意する」

CISGの存在意義は、相手方外国企業が日本法を準拠法とすることに同意しない場合で、かつ、相手方外国企業の国の法が整備されていないときなどに、中立的な準拠法としてCISGを適用することにより、(日本法とは違うものの)一定の規律をもって契約できる点にあります。

知らないうちに不利な条件で売買契約が成立してしまったなどということにならないよう、なるべく日本法を準拠法として、CISGの適用を排除しておくのが無難だといえます。
このようなことは、知っていなければそもそも対応ができません。
これを機に、ある程度の認識として持っておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。