税理士法人大沢会計事務所

路線価で評価したのに否認される場合とは

22.04.20
税務・経営お役立ち情報
dummy
相続したマンションの評価額について相続税の課税処分を争っていた訴訟について19日に最高裁の判決があり、納税者が敗訴しました。
納税者は国税庁が公表している財産評価基本通達に基づき路線価等を使用して相続税を計算しましたが、国税当局は不動産鑑定評価額をもとに追徴課税しました。
通常、国税庁が公表している財産評価基本通達に記載されているルールで路線価と固定資産税評価額をもとに不動産を評価して相続税を申告すれば否認されることは一般的にありません。


今回問題となった理由は、借入金で購入した不動産について、路線価と固定資産税評価額に基づき計算した評価額(約3億3千万円)と、実際の取引価額を想定した不動産鑑定評価額(約12億7千万円)との乖離が著しく、そのような場合に財産基本通達で定めた方法ではない不動産鑑定評価額で評価することが租税法上の平等原則に違反するものか否かというものでした。


最高裁は「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由がある」ため、平等原則に違反するものではないとの判断を示しました。
そして、不動産の購入と借入れが相続税の負担の軽減を意図して行ったものであるため、このような不動産の購入と借入れのような行為をしない(できない)他の納税者との不均衡が生じているため、租税負担の公平に反する事情があるものとしました。


そもそも、なぜ財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定評価の額に乖離が生じてしまうのでしょうか。
時価との乖離が生じる財産評価基本通達の主なルールは以下のとおりです。
・土地の評価計算に使用する路線価自体が時価の8割を目安に設定されている
・建物の評価額は高額に取引される個別事情(例:タワーマンションの高層階物件)等は一切考慮せず一律に固定資産税評価額を使用して評価額を計算する
・賃貸している不動産は将来キャッシュフローの収益性等を一切考慮せず一律に借地権割合、借家権割合を使用して評価額を減額できる

相続税対策として上記の仕組みを利用し借入金で不動産を購入することを金融機関が勧めていたケースは多いと思います。今回の判決がどの程度今後の申告実務に影響があるか、実務家の一人として注視していきます。

公認会計士・税理士 大沢日出夫
https://www.osawakaikei.jp/