税理士法人大沢会計事務所

“バイトテロ”を起こしたアルバイト従業員に賠償請求する場合

21.09.28
ビジネス【企業法務】
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いわゆる“バイトテロ”とは、飲食店や小売店の店員がふざけて不衛生な行動をしたり、故意に備品を破壊したりする様子を撮影し、ネット投稿するなどして、店舗に被害を負わせる行為のことをいいます。
バイトテロをする従業員は、多くの場合、社会経験の少ない若者です。
軽いイタズラ感覚で起こした行動とはいえ、動画が拡散されて、全国の人の目に触れることになれば、雇用者の被る損害は計り知れません。
今回は、バイトテロを起こした従業員に損害賠償請求を行うための条件や、その方法などを紹介します。
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店舗の経営者には多大なリスク! バイトテロ

近年、店舗の経営者が、バイトテロに頭を悩ませています。
大手回転寿司チェーンのアルバイト従業員が一度ゴミ箱に捨てた魚を拾い上げ、まな板に戻す動画がきっかけで騒ぎが起きたことは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。
ごく最近にも、焼肉店で大学生のアルバイト従業員がパスタを手づかみで口に入れる動画がSNSに出回り、6月には大手カレーチェーンで働くアルバイト従業員が股間に手を入れ、カレーのうえに不衛生なものをばらまいた動画が大きなニュースになりました。

これらアルバイト従業員による不適切な行為は、風評被害を生じさせるほかに、事実確認や店内の消毒・清掃のために休業せざるを得なくなるなど、企業側に甚大な被害を与えます
客足が戻らず、最終的には営業停止に追い込まれるなど、店舗の存続にまで影響を与えてしまうのです。
そのうえ、複数展開している大型チェーンの店であれば、顧客への謝罪、ステークホルダーへの対応など、多岐にわたる事後処理も必要になってしまいます。


アルバイト従業員にどこまで請求できるのか

では、バイトテロが発生した場合は、起こした本人に対して、どの程度まで損害賠償請求をすることができるのでしょうか。

アルバイト従業員が、刑法上の罪に問われるようなことをした場合は、刑事告訴をすることができます
刑法上の責任としては、名誉棄損罪や威力業務妨害罪、器物損壊罪に該当するケースが多いでしょう。

また、不法行為であれば、民事上の責任を問い、損害賠償請求をすることができます
前提として、民法では、従業員の故意や過失に基づく行為で企業側に損害が生じた場合に、企業側に『損害賠償請求権』が認められています。

たとえば、職場の備品や設備を壊すなどの行為は、会社の財産に実害を与えるため、損害賠償請求ができる可能性は高いといえます。
一方、不衛生な行為が風評被害の原因であるとして損害賠償を求める場合、会社側が因果関係を立証する必要があります。

どちらにせよ、バイトテロの内容によって、個別に判断する必要があるため、専門家と相談しながら、対応を決めていくことになるでしょう。


アルバイト従業員に損害賠償請求をするなら

実際に損害賠償請求をすることになったら、手順としては、店舗休業による損害額などを算出したうえで、まずは当事者本人と話し合いをすることになります。

交渉の場では、会社側が感情的に迫ってしまうと、自分たちが脅迫罪や恐喝罪に問われる可能性があるため、あくまで冷静に事実を基に話し合いを行うようにしましょう。
被害者の立場であるとはいえ、相手側とのやりとりには注意が必要です。

直接交渉により合意することを示談といいますが、ここで示談が成立しなければ、いよいよ裁判所で民事調停や民事裁判をすることになります。

民事調停は、簡易裁判所の調停委員会に間に入ってもらい、損害賠償についての話し合いをする調停のことです。
調停委員会から調停案を提示されることもあり、双方が合意すれば、解決となります。
もし、調停が不成立となれば、最終的には民事裁判に進みます。

また、たとえ1,000万円などの多額の損害賠償請求を行ったとしても、相手の経済状況によっては支払えないことも多く、調停や訴訟上の和解では減額を要求されるのが通常です。

2013年には、個人経営のそば屋が、アルバイト店員の問題行動によって休業・倒産に追い込まれ、負債総額は3,000万円を超えると報じられています。
このケースでは、店側は1,385万円の損害賠償を請求する裁判を起こしましたが、最終的には和解となり、和解金は騒ぎを起こした4人の合計で200万円ほどになりました。
これは、あまり納得のいく数字とはいえないのではないでしょうか。

アルバイトに対して損害賠償請求を行なうことは可能ですが、和解金額が思いのほか少なかったり、解決までに長い時間を要したりすることもあります。

まずは、研修によるモラルの徹底を図り、勤務中の撮影やスマートフォンの使用に関する規則を作るなど、バイトテロを起こさせないための防止策を講じることも大切です。


※本記事の記載内容は、2021年9月現在の法令・情報等に基づいています。