税理士法人大沢会計事務所

若者の仕事観から紐解く、人材採用にまつわる建設業の課題

21.04.30
業種別【建設業】
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募集をかけても若者が集まらず、担い手の高齢化が進んでいる建設業界。
現場の技能者などは、特に若い人材の採用が難しく、人手不足が深刻化しています。
また、若手を採用できたとしても離職率が高いことが悩みの種、という会社も多いようです。
今回は、若い世代の仕事観に響くような、建設業の魅力を発信する方法について考えます。
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安定志向が強いといわれる最近の若い世代

今の若い世代は、まず『安定した雇用環境が保証されている』ことを重視する傾向にあります。
そのため、新規学卒予定者・既卒者を問わず、多くの若者が正社員として就職することを強く希望しているそうです。
正規雇用であれば福利厚生が充実しており、社会保険料も会社と折半にすることができます。
収入面においても、正規雇用の方が有利であるため、比較して『非正規よりは正規』という考えを強めているようです。

つまり、正規雇用を前提に、『自分のやりたいことができるかどうか』『収入がいくらになるか』という2つの基準をもって、仕事探しに取り組みます。
これが、今の若者の仕事の探し方です。

逆に、昔と比べて若者が重視しなくなっているのが、『実力主義で偉くなれること』『細かく指示されずに、自分の責任で決められること』『社会的評価の高い仕事であること』です。
若い世代は、安定感、収入の多さに加えてやりがいを求める傾向があり、能力発揮へのこだわりや、他者からの評価については、それほど執着がない、という人が多いのです。

では、建設業界の現状はどうでしょうか。
大手や中堅、その下請けレベルでは当然のように行われている正社員雇用ですが、10人未満の小さな会社などは、なかなか難しく、個人事業主になってもらったり、更新付きの契約になったりすることが多くあります。

さらに、鳶職や現場監督など、現場関係の職種では、長時間労働や天候に関係ない屋外でのハードワーク、体育会気質の指示系統などが残っており、若い世代には受け入れがたい部分も課題として残っています。


多くの人と協力することが『やりがい』に

前章で述べたことが、今の若い求職者の姿であれば、それに見合った形で、建設業の魅力をアピールしていく必要があります。

建設業のやりがいは、あるゼネコンがCMで流したように、『地図に残る仕事』である点です。
自分が携わった仕事が『インフラ』『建築物』として、何十年、何百年という長い間残り続けるという仕事はほかになく、そこに建設業の魅力を感じている人も少なくありません。

最近の若者は、東日本大震災やコロナ禍などを経て、他人との絆や、助け合いに大きな価値を感じています。
建設現場のように、多くの人と協力しながら、一つのものを創り上げていく体験は、なかなかできるものではありません。

形あるものを長く残せる仕事であることや、多くの人と、力を合わせて一つの建造物を作り上げることは、建設業の大きな特徴であり、幅広い年齢層にやりがいを感じてもらえる業種だといえるのではないでしょうか。


ほかにもある、建設業のやりがい

また、建設業界に魅力を感じる理由としてよくあがるのが『成果が目に見えること』です。
だんだんと出来上がってくる建物やインフラ構造物を目にすると、やりがいを感じることができます。

ほかにも、確実にキャリアを積み重ねることができる点も、若者に訴えかけるべき部分ではないでしょうか。
キャリアアッププランを作って、着実に年収が上がっていくことを示すなどの工夫もできますし、技能者を多く抱える会社であれば、現場の仕事履歴が全て蓄積される『建設キャリアアップシステム』について説明したりするのもよいでしょう。

若者を迎え入れたいのなら、こうした建設業のやりがいをアピールすることに加え、働きやすい環境の整備も大切です。

たとえば、女性の施工管理職も増えていますが、まだまだ結婚・妊娠・出産とキャリアを両立できるような現場が少なく、どんどん離職してしまう問題があります。
出産後も働きやすい環境があれば、離職率の低下に繋げることができ、環境を整えることで、労働意欲を高める効果もあるでしょう。

また、現場監督補助の仕事で、非正規雇用から正規雇用への道を用意するなど、頑張れば正規雇用のチャンスがあると道を示せば、一旦、非正規で就職した若者にとっては、大きなモチベーションに繋がります。

そのほか、夏場には朝食代を支給する会社や、作業着のほかに、高性能な靴下を支給する会社もあり、そうした福利厚生を柔軟に取り入れる姿勢が、本人たちの節約効果以上に好評を得ることもあります。

いずれにせよ、若者が現状に慣れるのを待つのではなく、環境を若い人たちに合わせ変えていく気構えが重要です。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。