税理士法人大沢会計事務所

雇用調整助成金の特例、今後は?

21.03.04
人事・労務お役立ち情報
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業績の悪化により社員を休業させなくてはならなくなった事業主に対して支給される「雇用調整助成金」。昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響により、支給率の増額や申請書類の簡素化等、大幅な特例が設けられています。この「雇用調整助成金」について、3月7日までにすべての都府県で緊急事態宣言が解除されれば、特例期間の延長は4月末までということがアナウンスがされています。
この場合、4月末までは現行通りに中小企業では支給率10分の10、日額上限が15,000円ですが、5月以降はこれを段階的に縮小することになります。5〜6月は中小企業の支給率は10分の9、日額上限は13,500円になる予定です。ただし、感染拡大地域についてはこれまで通りにするとのこと。
では、その後はどうなるのでしょうか?
「夏以降の労働政策はどう考えているのか?」との質問に対して田村厚生労働大臣は、新型コロナの影響で経営が厳しい業種として、飲食、宿泊、観光などを列挙して、雇調金が果たした役割は大きかったとの認識を示しました。
そのうえで、「7月以降、基本的には雇用情勢が大幅に悪化しない限り、通常に戻す方向で検討している」と説明しています。
一方で「状況が厳しいと予想されれば、臨機応変な対応も考えないといけない」とも述べ、今後の対応に含みを残しています。

しかし、政府の政策としては「雇用維持」から「労働移動」へと軸足を移すことは間違いありません。
具体的には、業績が悪化している飲食業、ホテル・旅館業、製造業などから、雇用の吸収が期待できるIT企業や介護業などの業種への出向や転籍を促進するというものです。

この度新設された「産業雇用安定助成金」は、出向による雇用維持を図る企業に対して助成金が支給される制度です。概要を確認しましょう。


<「産業雇用安定助成金」制度の概要>

新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされ、労働者の雇用を在籍型出向により維持するため、労働者を送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、一定期間の助成を行う。


<「産業雇用安定助成金」助成内容>

対象労働者に係る次の経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、当該申請に基づきそれぞれの事業主へ支給する(申請手続きは出向元事業主が行う。)。

◆出向運営経費
労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、賃金、教育訓練及び労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費の一部を助成する。

・中小企業で労働者の解雇等を行っていない場合:10分の9
・中小企業で労働者の解雇等を行っていない場合:5分の4
・上限額:12,000円/1日あたり

◆出向初期費用
労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際して出向元であらかじめ行う教育訓練及び出向先が出向者を受け入れるために用意する機器や備品等、出向に要する初期経費を助成する。

・出向元、出向先ともに各10万円/1人あたり(定額)


●「産業雇用安定助成金」は令和3年2月5日から施行されましたが、同年1月1日からの出向に対して助成されます。厚生労働省では、この助成金を含めた在籍型出向支援策を推進しています。ご確認ください。

厚生労働省「産業雇用安定助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805_00008.html
社会保険労務士 大沢富士夫