税理士法人大沢会計事務所

「未払賃金の時効延長」で企業が考えること

20.05.07
人事・労務お役立ち情報
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令和2年3月に行われた参院本会議で、従業員が未払いの残業代などを企業に請求できる期限(時効)について、労働基準法で「過去2年分」とされている規定を「当面3年に延長」する改正労働基準法が可決・成立し、令和2年4月1日に施行に施行されました。
賃金請求権の消滅時効期間の延長

 令和2年(2020年)4月1日以降に支払期日が到来するすべての労働者の賃金請求権について、消滅時効の期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。

●消滅時効の期間の延長の対象となるもの
 ・金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)
 ・賃金の支払(労基法24条)
 ・非常時払(労基法25条)
 ・休業手当(労基法26条)
 ・出来高払制の保障給(労基法27条)
 ・時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)
 ・年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)
 ・未成年者の賃金(労基法59条)

※年次有給休暇の請求権の消滅時効の期間(2年)
 退職金の請求権の消滅時効の期間(5年)に変更はありません。


企業としての対応

 たとえば、令和2年4月に支払うべき賃金の一部に未払いがあり、その状態が続いていたとすると、3年後に、“3年分をまとめて請求される”といったことも起こります(これまでは最大で2年分でした)。
 今回の改正では「原則5年、当分の間は3年」ということになりましたが、5年に延長するかどうかは5年後に検討するとのことです。
 いずれにせよ、現場においては、未払賃金を生じさせないための労働時間の管理、正確な給与計算といった労務管理体制作りがこれまでにも増して必要となってきます。

社会保険労務士 大沢富士夫