税理士法人大沢会計事務所

賃金請求権の消滅時効「2年」→「3年」に

20.02.06
人事・労務お役立ち情報
dummy
厚生労働大臣から令和2年1月10日付で、賃金請求権の消滅時効の期間を含む労働基準法を改正する法律案の要綱が示されました。
「賃金請求権」とは、残業代などの未払い賃金を請求できる権利のことで、現在の消滅時効は「2年」となっています。

「賃金請求権の消滅時効の在り方」については、労働政策審議会で議論されていましたが、労働側の委員が労働者の権利保護のため改正民法と同じ5年の時効を求める一方、企業側の委員は賃金台帳などの記録を長期間保管する負担が重いという理由で延長に反対する、といった見解の相違がありなかなか進みませんでした。
しかし、学識者らによる公益代表の委員が折衷案を示し、ようやく方向性が固まり、令和2年4月1日から改正される見込みとなりました。

法律案の主な内容は以下の通りです。

●賃金請求権の消滅時効の期間は、民法の一部改正とのバランスも踏まえ、「5年」とする。
※当分の間、現行の労基法に規定する記録の保存の期間に合わせて「3年」間とする。
●退職手当の請求権の消滅時効の期間については、現行の「5年」を維持。
●起算点は、現行の労基法の「客観的起算点(権利を行使することができる時から起算)」を維持する。
●賃金請求権以外の請求権(年次有給休暇請求権・災害補償請求権は2年、帰郷旅費は契約解除より14日以内等)の消滅時効の期間については、現行の消滅時効の期間を維持する。
●労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存の期間については、賃金請求権の消滅時効の期間に合わせて原則は「5年」としつつ、当分の間は「3年」とする。
●付加金の請求期間については、賃金請求権の消滅時効の期間に合わせて原則「5年」とする。※当分の間は「3年」
とする。
●施行期日については、民法一部改正法の施行の日(「令和2年4月1日」)とする。
●労基法における経過措置として、「施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権」の消滅時効の期間について改正法を適用することとし、付加金の請求の期間についても同様の取扱いとする。
●施行後5年を経過した場合、検討し必要な措置を講じる。


厚生労働省は、今回の通常国会に労働基準法の改正案を提出し改正民法と同時の施行を目指しています。順調にいけば、賃金請求権の消滅時効の期間が、現在の2年間から3年間→5年間と段階的に延長されることになります。

そうなれば残業代未払いのリスクも1.5倍→2.5倍となっていき、事業主の負担がますます増えることになります。
もし、正しい残業時間管理ができていなかったり、多忙で勤怠管理が後回しになってしまっている、というような状態であれば、これを機会に勤怠管理方法の見直しが必要です。
社会保険労務士 大沢 富士夫