税理士法人大沢会計事務所

働き方改革の対応、いつから必要?

18.05.10
人事・労務お役立ち情報
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政府は、平成30年4月6日、今国会の最重要法案と位置づけている「働き方改革関連法案」を閣議決定し、同法案が国会に提出されました。

法案作成の詰めの段階で、裁量労働制の適用の拡大の削除、施行を目指す期日の見直しなどが行われています。概要を確認しておきましょう。


第196回通常国会に提出された「働き方改革関連法案」の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」といいます。
以下、厚生労働省の資料より概要を紹介いたします。

<目的>
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、 多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずる。 


I  働き方改革の総合的かつ継続的な推進 
 働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」を定めることとする。


II  長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
 
1 労働時間に関する制度の見直し
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度に設定。
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。また、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
・高度プロフェッショナル制度の創設等を行う。
・労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならないこととする。

2 勤務間インターバル制度の普及促進等
・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。

3 産業医・産業保健機能の強化
・事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。


III  雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

1 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。併せて有期雇用労働者の均等待遇規定を整備。

2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。

3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備。

【施行期日】 
I:公布日
II:平成31年4月1日(中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定の適用は平成32年4月1日、1の中小企業における割増賃金率の見直しは平成35年4月1日)
III:平成32年4月1日(中小企業におけるパートタイム労働法・労働契約法の改正規定の適用は平成33年4月1日)

この改正の目玉は、何といっても「時間外労働の上限規制(Ⅱの1の一部)」です。時間外労働の上限規制は、各企業にとって負担が大きいものです。法案が予定どおりに成立した場合、一般的な業種の大企業では、来年4月から対応を迫られることになります。一部の業種については適用を猶予され、中小企業については施行期日が1年遅れとなっています。

「同一労働同一賃金の実現に向けた改正(Ⅲ)」についても注目されていますが、これについては、大企業・中小企業ともに、施行期日に余裕が設けられています。

細かな規定に目を向けると、一定日数の年次有給休暇の確実な取得(使用者は、10日以上の年休が付与される労働者に対し、5日については、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする)など、企業への影響が大きい内容が含まれています。

法案が成立した場合、企業規模を問わず平成31年4月1日施行される規定が大半となっています。国会での審議の動向から目が離せません。

社会保険労務士 大沢富士夫