今年の贈与、どうしますか?
令和5年度の税制改正で、令和6年以降の贈与の“選び方”が変わりました。
迷いがちな 暦年課税と相続時精算課税をまずは要点で整理します。
暦年課税:
毎年110万円までは非課税。110万円超は累進課税。
ただし相続税の生前贈与加算が拡大中(2024年以降の贈与は最長7年へ段階的拡大/延長4年分は合計100万円まで加算対象外に)。
相続時精算課税:
毎年の基礎控除110万円+累計2,500万円の特別控除。超えた部分は一律20%。
相続時は贈与時の価額で持ち戻して相続税を計算(=値上がり資産は有利になり得る)。
いったん選ぶと原則撤回不可。
どちらを選ぶ? 迷ったら、次の6つの観点で自分の状況に当てはめてみましょう。
1.贈与時のキャッシュアウト(当面の負担)
毎年少額をコツコツなら 暦年課税 がシンプル。
短期間でまとまった移転が必要なら 精算課税(年110万円+特別控除2,500万円)で贈与時の負担を抑えやすい。
2.相続時の取り扱い(持ち戻し・加算)
暦年課税は生前贈与加算の対象期間に注意(2024年以降の贈与は最長7年へ段階的拡大/延長4年分は合計100万円まで加算対象外)。
精算課税は贈与時の時価で持ち戻し、既納の贈与税は相続税で控除(還付)されるため、評価“凍結”効果が期待できる場合あり。
3.資産の性質(値上がり/値下がり見通し)
将来の値上がりが見込まれる資産(株式・不動産等)は 精算課税 が有利になりやすい。
値上がり見通しが薄い/不明なら、精算課税を選ぶ決め手は弱い。
4.金額・回数・スピード感
早期にまとまった移転が要るなら 精算課税 を検討。
毎年一定額を長期でなら 暦年課税 が運用しやすい。
5.撤回できないリスク許容度
精算課税は選択後の撤回不可(贈与者ごとに固定)。将来設計が大きく変わりにくい方向け。
6.相続開始時期の想定
近い将来に相続が想定されるなら、相続時の扱い(加算期間、持ち戻し方法)を踏まえ、どの制度で・どの資産を・いつ移すかを逆算するのが肝心
11月となり令和7年も残り2か月となりました。
「今年の贈与をどう設計するか」を決める期限が近づいています。申告の要否も含めて何をすべきか後悔のない選択をしましょう。
公認会計士・税理士 大沢日出夫
https://www.osawakaikei.jp/