士業の森/相続贈与相談センター岩手県支部

パート・契約社員から正社員への転換を推進する措置が義務化

21.06.08
ビジネス【労働法】
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従来のパートタイム労働法に労働契約法の一部が加わって『パートタイム・有期雇用労働法』に改正され、2021年4月1日からは中小企業にも適用されています。
非正規労働者の雇用環境を改善するためのさまざまな定めがあるなか、同法第13条では、すべてのパートタイム労働者と有期雇用労働者に対して、正社員への転換の推進措置を講じることが義務づけられています。
今回は、実際に事業者はどのような措置を講じればよいのか、『正社員に転換するための措置』の具体的な内容について解説します。
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非正規労働者の雇用環境を整備するために

少子高齢化が進み、労働力人口が減り続けるなかで、日本では雇用者全体の37.2%が非正規職員・従業員となっています(厚生労働省『労働力調査』より)。
パートタイム労働者や有期雇用労働者などの非正規労働者の重要性が増すなか、非正規労働者がより能力を発揮できる雇用環境を整備するため、『パートタイム労働法』が改正され、また労働契約法の一部が『パートタイム労働法』に加わり、『パートタイム・有期雇用労働法』となり、2020年4月に施行されました。
中小企業については、1年遅れて2021年4月に施行されています。

パートタイム労働者とは、同一の事業所で働く正社員(無期雇用フルタイム労働者)に比べて、1週間の所定労働時間の短い労働者のことをいい、有期雇用労働者とは、事業主と期間の定めのある労働契約をしている労働者のことをいいます。
パートタイマーやアルバイト、契約社員や臨時社員に嘱託社員など、呼び名は異なりますが、正社員ではなく上記の条件を満たしている労働者に、この法律が適用されます。

これにより、1人でもパートタイム労働者や有期雇用労働者を雇用している事業者には、さまざまな義務が課されることになりました。
その一つが、同法第13条で定められている『通常の労働者への転換義務』です。

パートタイム労働者や有期雇用労働者のなかには、通常の労働者として働くことを希望しながらも、やむを得ずパートタイム労働者や有期雇用労働者として働いている人もいます。
パートタイム・有期雇用労働法では、そのような人たちに通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずることを義務づけています。
ここでいう“通常の労働者”とは、社会通念に従って通常と判断される労働者と定義されており、いわゆる正社員のような無期雇用のフルタイム労働者のことを指します。

通常の労働者への転換義務は、従来のパートタイム労働法にも定められていましたが、法改正によって、パートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者も対象に含まれるようになりました。


正社員に転換するための措置の具体的内容

では、『通常の労働者への転換義務』の具体的内容を見ていきましょう。
正社員への転換を推進するため、事業者は(1)~(4)のいずれか、あるいはその他の措置を講じなければいけません。

(1)通常の労働者を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパートタイム・有期雇用労働者に周知する
会社が正社員の募集を行う場合に、社内の提示や回覧などで、業務内容や賃金などの募集内容をパートタイム労働者や有期雇用労働者に周知するという措置です。
応募の機会を与えることが目的なので、たとえば新卒採用しか行っていない会社であれば、応募できる対象者が限定されてしまうため、別の措置を講じる必要があります。
なお、義務化されているのは『周知』についてのみで、実際にパートタイム労働者や有期雇用労働者が応募したかどうかや、採用するかどうかは問われません。

(2)通常の労働者のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパートタイム・有期雇用労働者にも応募する機会を与える
(1)の周知と同様に、パートタイム労働者や有期雇用労働者に対し、応募の機会を付与するもので、実際に採用するかどうかまでは問われません。
ただし、採用はその人の能力や経験に基づく公正なものである必要があります。

(3)パートタイム・有期雇用労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
正社員への登用試験を設ける措置で、事業所の実態に則した試験や条件を課す必要があります。
登用したくないからといって、必要以上に試験を難しくしたり、条件を厳しくしたりすることは禁止されています。

(4)その他通常の労働者への転換を推進するための措置

さらに、これらの措置を講じる際には、措置を講じるということを事業所内の掲示板に提示したり、社内メールなどで告知したりするなど、措置の内容をパートタイム労働者や有期雇用労働者に随時周知する必要があります。

雇用の転換措置は、客観的に見て公正で不満の出ない取り組みであることが大切です。
社内での意見も取り入れながら、正しい措置を講じていきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。