士業の森/相続贈与相談センター岩手県支部

相続人の確定に誤りがあった場合はどうなる? 遺産分割協議の注意点

21.04.06
業種別【不動産業(相続)】
dummy
家族が亡くなった後、被相続人の遺産をどのように引き継ぐかは大きな問題になります。
被相続人が遺言を残していれば、その遺言に従って遺産を分ければよいですが、遺言がないときには、遺産分割協議をすることになります。
その際、実は遺産を分けなければいけない、予想外の人物が出てきてしまうこともあります。
今回は、親族内で揉めてしまうことのないよう、遺産分割協議をするときの注意点を説明します。
dummy
とにかく戸籍を取得。思い込み判断はNG!

遺産分割協議をする場合、『誰と』話し合うのかを確認すること、つまり相続人を確定する作業が最初の関門となります。
被相続人に配偶者と子がいる場合など、相続人となりうる人の範囲が狭いときは、あまり問題は生じません。

しかし、被相続人に配偶者も子もおらず、直系尊属もすでに亡くなっており、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、この相続人を確定する作業に細心の注意が必要となります。
たとえば、兄弟相続の場合、相続人である兄弟自身も高齢になっていることが多く、すでに亡くなっている兄弟がいる場合には、代襲相続(本来相続人になるはずの人が死亡などの理由で相続できないときに、その人の子が代わりに相続する制度)が発生します。
そこで、もし兄弟に隠し子がいた場合、その事実を知らずに遺産分割を進めてしまうと、本来であれば相続人の資格を持っている人を入れずに遺産分割協議を行うことになってしまいます。
そのようなケースでは遺産分割をやり直す必要が出てきてしまうため、相続人の確定は慎重に行うことが重要です。

相続人を確定するには、被相続人の『生まれてから死ぬまで』の戸籍謄本を取得します。
そして、兄弟相続になることが判明したら、以下の戸籍謄本を取得し、ほかに相続人になりうる人がいないか、くまなくチェックすることが大切です。

(1) 被相続人の両親の、婚姻できる年齢から死ぬまでの戸籍謄本
(2) 兄弟の、婚姻できる年齢から死ぬまで又は現在までの戸籍謄本
(3) 兄弟の子の現在の戸籍謄本

手間のかかる作業ですが、遺産分割協議が整い、金融機関に相続の届出をする際にはこれらの戸籍謄本の提出を求められることがありますので、決して無駄な作業ではありません。
むしろ、協議が終わってから新たな相続人の存在が判明するよりは、この時点で隅々までチェックしておいた方が安心といえるでしょう。


相続人の確定に誤りがあったときの対処法

相続人の確定は慎重に行うべきですが、それでも、遺産分割協議が終わった後に、次のようなことが起こりえます。

A. 一部の無資格者が協議に参加していたことが判明する
B. 相続人資格を有する者がほかにもいたことが判明する

Aのケースが起きるのは限定的な場面といえるので、ここではBのケースの遺産分割協議の効果と、対処法を説明します。

Bのケースでは、本来であれば相続人の資格を持っており、遺産分割協議に参加して自身の権利を主張できた人が、協議に参加できていないことになります。
したがって、当該協議には重大な瑕疵(かし)があったということになり、遺産分割の安定性よりも協議に参加できなかった人の利益を重視して、分割をやり直すべきであると考えられます。
そのため、まずは新たに相続人であることが判明した人に、連絡をとるところから始めることになります。

というのも、大半の場合、協議から漏れてしまった人というのは、被相続人やその他の協議を行っていた相続人との関係が希薄であることが多く、その人自身も、自分が当該被相続人の遺産を相続する立場にあることを認識していないことが多いのです。
そこで、まずはその人に連絡を入れ、遺産相続を希望するかどうかの意思確認から始めることとなります。
仮に、その人としても、被相続人およびその他の相続人との関係が希薄であることなどを理由に、当該遺産分割に関与することを希望しないということになれば、その人に相続放棄をしてもらうことができます。
そうすることで、その人は初めから相続人でなかったものとみなされ、すでに行った遺産分割協議が有効だということになります。

一方で、その人が遺産を相続することを希望する場合には、遺産分割協議は無効となり、再度すべての相続人間で協議する必要が生じます。
ただ、そのような場合にも、協議をし直すことによって、財産の移動を最小限に留める工夫を施せるのです。

このように、相続人の確定に誤りがあると、後になって複雑な問題が生じてしまいます。
相続が開始したら、まずは相続人確定を慎重に行うことが重要です。
それでも誤りが生じてしまったときには、専門家に相談するなどして、すべての相続人間で協議を進めながら、円満な解決を目指していきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。