士業の森/相続贈与相談センター岩手県支部

確定申告後に税金の払い過ぎに気付いた場合の対処法は?

20.06.09
ビジネス【法律豆知識】
dummy
1年間の所得を申告し、納税する『確定申告』。
もしも確定申告後に間違って税額を少なく申告していたことがわかった場合は、税務署から足りない分を支払うように求められます。
では、間違って多く申告し、納税してしまった場合はどうなるのでしょうか。
これには『更正の請求』という救済措置が用意されています。
今回は、税金を納め過ぎてしまった場合の対処法をご紹介いたします。
dummy
税金を納めすぎたら『更正の請求』を

まず、間違えて税金を支払い過ぎてしまったとしても、税務署は、基本的には親切に教えてくれませんし、自発的に返金してもくれません。
これは税務署のマンパワーを考えれば、仕方ないことです。
納税者間の公平の観点から、少なく支払っている人に対しては是正を促す必要がありますが、自発的に多く支払ってきた人にまで対応することは物理的に困難でしょう。
そのため、間違えて税金を多く支払ってしまった人は、自ら申告して税務署に税額の訂正を求める必要があるのです。
この手続を『更正の請求』といい、国税通則法23条1項に原則的な内容が規定されています。

更正の請求をする場合は、税務署に用意されている『更正の請求書』に必要事項を記入し、所轄税務署長に提出します。
その後、税務署が内容を調査し、請求内容が適正であると認められたときは、減額更正が行われ、納め過ぎた税金が還付されます。
なお、国税庁のホームページの『確定申告書等作成コーナー』からも更正の請求書を作成することができます。
これを印刷して税務署に提出するほか、e-Taxで提出するという方法もあります。


『更正の請求』の要件とは?

更正の請求は、原則として、申告書に記載した課税標準等または税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、当該計算に誤りがあったことにより、以下の(1)~(3)に該当する場合に行うことができます。
また、請求ができる期間は当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内となっています。

(1)申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき
(2)申告書に記載した純損失等の金額が過少であるとき、または、申告書に純損失等の金額の記載がなかったとき
(3)申告書に記載した還付金の額に相当する税額が過少であるとき、または、申告書に還付金の額に相当する税額の記載がなかったとき

以前は、法定申告期限から1年以内しか更正の請求をすることができませんでした。
しかし、税務署が職権で更正できる期間は所得税が3年、法人税が5年等となっており、不公平であるということから、平成23年度税制改正において、更正の請求が可能な期間も税務署が職権で更正できる期間も、原則として5年とされました。

なお、5年の期間が過ぎてしまった場合でも、後発的理由(判決等で計算の基礎とした事実が異なることが確定したときなど)によって所得の金額等に異動が生じた場合等は、当該理由が生じた日から2カ月以内に更正の請求を行うことができます(国税通則法23条2項)。

以上のとおり、支払い過ぎてしまった税金は、自ら『更正の請求』を行わないと、原則として返ってきません。
間違えて税金を多く支払ってしまった場合に備えて、『更正の請求』という制度があることを頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
もちろん、まずは正確な申告を行うことが大切です。
余裕を持って準備し、提出前に誤りがないか再度チェックするなどの対策をしましょう。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。