士業の森/相続贈与相談センター岩手県支部

初めての外国人採用 外国語版の就業規則は必要?

18.06.15
ビジネス【労働法】
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【相談内容】
当社では、グローバル化に伴い外国人の採用を検討しています。
採用にあたり、外国語版の就業規則を作成しておく必要がありますか? 

また、就業中のトラブルを未然に防ぐため、別途、外国人労働者用の就業規則を作成したいのですが可能でしょうか?
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結論
外国人労働者に分かりやすいよう、既存の就業規則をその従業員の母国語または英語に翻訳しておくとよいでしょう。
ただし、日本人労働者と外国人労働者とで就業規則の内容を変えることは認められません。


外国人のみに適用される
就業規則の作成不可!

日本国内の事業所で働く場合、外国人であっても、労働基準法・労働契約法・最低賃金法・労働安全衛生法などの日本の法律が適用されます。

また、外国人であっても日本での雇用関係がある以上、日本人労働者と同様に社会保険の加入義務が発生します。

そのため、労働基準法3条にて『使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない』と定められています。

つまり、国籍などを理由に日本人労働者と外国人労働者とで待遇や労働条件に違いを設けることは禁じられているのです。
したがって、外国人労働者だけを対象にした就業規則を別途作成することはできません。

ただし、英語などに翻訳するなど、合理的な理由がある場合は、別途就業規則を作成することが可能です。


就業規則の内容を
理解してもらうことが重要!

労働条件を定めた就業規則は、労働者に“周知”する必要があります(労働基準法106条)。
なお、周知する方法については、以下の通りです(労働基準法施行規則52条の2・要約)。

・常時、各作業場の見やすい場所に掲示or備え付ける
・労働者へ書面を交付する
・各作業場に設置したパソコンなどから閲覧できるようにする

いずれの方法においても、『従業員が必要なときに、簡単に就業規則を確認できる状態にあること』が周知の要件といえるでしょう。

なお、厚生労働省は『外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針』(平成19・8・3厚労告276号)にて、労働条件の明示に関し、以下のように定めています。

『事業主は、外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について、当該外国人労働者が理解できるようその内容を明らかにした書面を交付すること』。

『事業主は、労働基準法等関係法令の定めるところにより、その内容について周知を行うこと。その際には、分かりやすい説明書を用いるなど、外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること』。

つまり、 外国人労働者の母国語または英語などに就業規則を翻訳しておくことが必要です。


安全衛生の確保にも注意!

このほか、同指針では、安全衛生の確保に必要な措置などとして、下記のことを規定しています(一部抜粋)。

(1)安全衛生教育の実施
『当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。特に、外国人労働者に使用させる機械設備、安全装置または保護具の使用方法などが確実に理解されるよう留意すること』

(2)労働災害防止のための日本語教育
『労働災害防止のための指示などを理解できるようにするため、必要な日本語および基本的な合図などを習得させるよう努めること』

(3)労働災害防止に関する標識・掲示など
『事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示などについて、図解などの方法を用いるなど、外国人労働者がその内容を理解できる方法で行うよう努めること』

なお、厚生労働省では、英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語版の『モデル就業規則』をホームページで公開しています。

外国人を採用する際には、在留資格や就労資格、在留期間などを確認する必要があります。
また、雇用対策法第28条により、外国人の雇用・離職の際にはハローワークへ届け出ることが義務づけられています。

万が一、在留資格のない外国人を働かせた場合は、『不法就労助長罪』(入管法第73条の2)により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
不法就労とならないよう、“在留期間の更新申請が不許可となった場合”など、『在留資格を失った際は雇用契約が終了する旨』をあらかじめ就業規則に定めておくとよいでしょう。



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