社会保険労務士法人杉原事務所

『患者数の平準化』で患者の待ち時間を減らして満足度をアップ!

23.10.31
業種別【医業】
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診療科によって差はあるものの、病院や診療所での外来患者の平均的な待ち時間は、おおむね15分以上といわれています。
患者数が多いのは経営のうえではよいことですが、多すぎると診察までに長時間待たせてしまい、結果として患者の満足度を下げることになってしまいます。
そこで重要になるのが、院内の混雑を分散させる『患者数の平準化』です。
平準化とは、物事を偏らないよう均一にする取り組みのことを指すビジネス用語です。
病院や診療所でどのように患者数の平準化を行えばよいのか、具体的に実施できる取り組みについて考えていきます。
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「患者数の平準化」のメリット

外来患者の多くは、診察までの待ち時間にストレスを抱えています。
2020年に日本医師会が公表した『第7回日本の医療に関する意識調査』における「受けた医療の内容別満足度」では、約30%以上もの患者が病院や診療所の「待ち時間」に満足しているとはいえないと感じていることがわかりました。
待ち時間に対する不満はほかの項目と比べても群を抜いて高く、多くの患者が病院や診療所で待たされている現状が浮かび上がってきます。

実際に患者がどのくらい待たされているのかは、厚生労働省による『令和2(2020)年受療行動調査』で確認することができます。
調査報告の「病院の種類別にみた外来患者の診察等までの待ち時間」によれば、待ち時間が「15分未満」だった患者は28%とトップでしたが、「15分~30分未満」が25.7%、「30分~1時間未満」が20.9%、「1時間~1時間30分未満」が10.1%と続き、多くの患者が15分以上待たされていることがわかりました。

待たされる時間が長くなればなるほど、患者の満足度は下がっていき、患者離れを招きます。
また、院内に流行性の感染疾患の患者がいれば、混雑すればするほど院内感染のリスクが高まることにもなります。

患者離れや院内感染を防ぐためにも、曜日や時間における患者のピークを分散させ、どの曜日、どの時間帯でも一定の患者数にする「患者数の平準化」を行なうことが重要です。

さらに、患者数の平準化は、業務の効率化にもつながります。
病院や診療所は、医者や看護師、医療機器の数によって、一定時間内に受け入れることのできる患者数が決まっています。
多くの病院や診療所はピーク時の患者数に対応できるように医者や看護師、医療機器の数を揃えているため、混雑状況にばらつきがあると、繁忙時にだけ忙しく、閑散時には逆に手が空いてしまうという状態になってしまいます。
患者数の平準化ができれば、常にピークの70~80%というほどよい混雑具合となり、院内スタッフも余裕のある対応が可能になるでしょう。

院内の混雑を分散させるための取り組み

一般的に病院や診療所が混む曜日は、土・日・祝日、そして休診の翌日といわれています。
土・日を休診にしている診療所では、その前後の金・月に患者が集中する傾向にあり、ゴールデンウイークやお盆など大型連休の前後も混み合います。
時間帯としては、診療を開始した直後と昼休みの前後、そして診療が終了する直前のタイミングで患者が増加します。

まずは混雑する曜日や時間を把握したうえで、状況を見ながら昼休憩の時間や休診日を変えてみるのも一つの方法です。
たとえば、オフィス街に近い診療所では、多くの患者が仕事に差し支えないように、昼休みや仕事終わりに受診しようとします。
そこへの対処としては、昼の診療時間を長くしたり、診療時間を全体的に後ろ倒しにしたりするといった対策が考えられます。
さらに、土・日は多くの会社が休みなので、休診日にしても問題ないかもしれません。
逆に、住宅街では休みの日に診察を受けたいというニーズが高いため、土・日を休診日にするのはあまり得策ではありません。

また、患者に混雑する曜日や時間帯を伝えて、ほかの曜日や時間帯の来院を促したり、ホームページや院内掲示で混雑する曜日や時間帯を通知したりする方法も効果的です。
一部の医療機関では、携帯電話やスマートフォンで待ち時間の確認ができる院内システムを導入しているところもあります。
院内システムは、予約管理システムと紐づいているものも多く、双方のシステムを適切に活用していくことで、患者数の平準化を図ることができるでしょう。

一方、予約だけで診療時間を埋めてしまうと、予約なしで来院する患者を長時間待たせてしまうことになります。
一定時間のなかで受け入れることのできる患者数を割り出し、予約の患者を何人、予約なしの患者を何人まで診察すると決めておくことで、患者の待ち時間を極力減らすことができます。

患者数の平準化は患者の満足度を上げ、集患にもつながります。
また、業務の効率化やスタッフの負担軽減などのメリットもあります。
まずは、自院の診療形態や混雑傾向を踏まえて、どのような取り組みができるのか考えてみましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。