社会保険労務士法人杉原事務所

新卒採用を成功に導く! サロン見学の可能性

23.01.31
業種別【美容業】
dummy
日本国内には約37万軒もの理美容室が存在し、美容室の数は増加の一途をたどっています。
その一方で国家試験の受験者は減少傾向にあり、美容師の新たな雇い入れは、多くのサロン経営者にとって頭を悩ませる問題といえます。
現代の若者にアプローチしやすい採用手法として、急速に普及したのがオンライン採用です。
しかし、モニター越しの会話はお互い理解しづらい場合もあります。
そこで、オンラインで母集団を形成してから店舗まで足を運んでもらう『サロン見学』の重要性が、昨今改めて注目されるようになってきました。
今回は、理美容室におけるサロン見学について、そのメリットや進め方を解説します。
dummy
求人倍率3.29倍、SNSを活用した採用活動の普及

現在、理美容業界では人手不足が慢性化しています。
厚生労働省の発表によると、2020年度の理美容師を含む『生活衛生サービス』の有効求人倍率は3.29倍で、全体平均の1.23倍に比べて2ポイント以上高い状況です。
しかし、サロンの将来性や労務環境に不安を抱く美容学生が増えて応募者数は伸びず、「新卒の人材確保は特に厳しい」と感じるサロン経営者の方も多いようです。
また、せっかく採用しても離職してしまうケースも多く、離職率は1年目で約3割との調査結果も発表されています。

こうした状況のなか、SNSによる採用活動は、若者や理美容業界と相性がよく、かねてから積極的に展開されてきました。
特にInstagramなどの写真や動画の投稿に特化したSNSは、サロンの施術事例や雰囲気などをタイミングよく発信でき、その掲載記事の内容に共感した学生に直接アプローチできる利点があります。
こうしたオンラインによる採用活動はコロナ禍でより助長されるようになり、この流れは今後も続くと考えられます。


SNSで母集団を形成! 理美容室の採用活動の流れ

理美容室のオンライン採用活動は、一般的に次のような手順で行われます。

(1)採用情報の発信
会社やサロンの採用情報を、InstagramやYouTube、公式サイトで発信します。
関心のある学生にはDM(ダイレクトメッセージ)などでコンタクトを取り、次のステップへの導線を確保します。

(2)説明会の開催
Zoomなどを活用してオンライン説明会を開き、サロンの労働条件や理想の美容師像など、採用に必要な情報を伝えます。
その際に、学生からの質問も受けつけます。

(3)サロン見学会
オンラインでは伝わりきらない業務環境やスタッフの様子を、実際に店舗へ招いて見学してもらいます。
サロンにとっても、直接学生に会ってコミュニケーションできる貴重な機会です。
応募書類提出方法や面接日程など、見学会後の選考の流れについての説明も行いましょう。
コロナをきっかけにオンライン面接が普及しました。
応募者の希望に応じて、オンライン・オフライン面接を選べるようにしておくとよいでしょう。

(4)選考
見学会、書類選考、面接結果などをもとに、内定者を決めます。

以上のような手順のなかで実行するサロン見学には、次のようなメリットがあります。
【サロン見学のメリット】
●スタッフの雰囲気やサロンの特徴を理解してもらいやすい
●就職後のイメージがつきやすくなり、より明確な志望動機となる
●お互い踏み込んだ質問ができ、採用後のミスマッチを防ぐ

オンラインツールによる交流は便利ですが、対面のコミュニケーションに勝るものではありません。
双方の理解を深め合うため、積極的にサロン見学を活用していく姿勢が求められます。


長所をアピール! サロン見学会の手順

サロン見学は学生側から申し込まれる場合もありますが、ここでは、サロン主導で見学会を開催する手順を紹介します。

(1)開催日時とプログラムを決める
受け入れ可能なスケジュールと体制を組み、参加者の希望を募ります。
店内の様子をただ見てもらうだけでは、サロンの思いを伝えることはできません。
詳しい説明や質疑応答のための時間も準備しておきましょう。

(2)見学会の開催を周知し、申し込みを受けつける
サロンの公式HPやSNS、会社説明会などを活用し、見学会の開催を発信します。

(3)サロンの環境を整える
見学者は、サロンの雰囲気や設備、スタッフの様子などを見ています。
改善するべき点がないかチェックし、サロンの考え方などをスタッフ間で情報共有しておきましょう。

(4)見学会を実施する
受付や自己紹介をしたあと、説明をはさみながら店内を案内します。
学生からは1日の仕事の流れやスタイリストデビューまでの年数、教育体制などについて質問があるかもしれません。
「忙しそうで質問できない」などと思われないよう、見学者の様子に気を配りながら、明るく丁寧な応対で質問しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。

(5)関係を維持する
アンケートをお願いしたり、お礼メールを送ったりなどして、見学会のあとも学生一人ひとりとの関係を継続していけるよう努めましょう。

オンラインツールが充実した今だからこそ、対面でのコミュニケーション時に求められる役割が増えています。
学生に寄り添った見学会を開催しサロンの長所を印象づけ、採用を成功に導いていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。