社会保険労務士法人杉原事務所

『軽減税率制度』実施間近! テイクアウト&宅配利用者に着目を

19.09.03
業種別【飲食業】
dummy
2019年10月1日から、いよいよ消費税率が10%に引き上げられます。
それと同時に『軽減税率制度』が実施されます。
すべての事業者に関係する制度ですが、その内容や対応の仕方がいまいちわからないという人もいるでしょう。
そこで今回は『軽減税率制度』のポイントをおさらいするとともに、この影響を大きく受ける飲食店にとって有効な対策を紹介します。
dummy
『軽減税率制度』で知っておくべきことは?

今年10月1日からの税率は、標準税率が10%(うち消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)、軽減税率が8%(うち消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)となります。
軽減税率の対象となるのは、“酒類・外食を除く飲食料品”と“定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞”のみです。

そのため、飲食業では、『仕入れ(経費)』『売り上げ』『レジ対応』などで消費税の対応が必要になります。

たとえば、ハンバーガーを提供する店の場合、使用するレタスや肉は軽減税率が適用されるため、8%の消費税で仕入れます。
お客が店内でハンバーガーを食べる場合は『外食』にあたるため、標準税率である10%の消費税をかけて販売します。
一方、ハンバーガーを『テイクアウト』で提供する際は軽減税率の対象となるため、8%の消費税をかけて売り上げます。

また、おもちゃ付きのお菓子など、食品と食品以外の資産をセットにして販売する際は『一体資産』と呼び、販売価格(税抜)が1万円以下のもので、かつ飲食料品の価額に占める割合が3分の2以上となるときに限り、その全体が軽減税率の対象となります (ただし、一体資産全体の価格のみが提示されている場合に限ります)。

帳簿と請求書に税率ごとの区分を明確に記すことも求められるため、レシートの記載もわかりやすくしなければなりません。
税率や区分登録ができないレジを使用している飲食店では、品目名に『※』などの印を追加し、『※は軽減税率対象品目』などと表示する方法も認められます。
仕入れ時も、食材と酒類では税率が異なるため、正しく区別していく作業が大切です。


『軽減税率制度』対象のボーダーライン具体例

では、フードコートや店先にある公園のベンチで食べる場合や、ケータリングなどではどうなるのでしょうか。
軽減税率の適用・不適用となるケースを具体的に見ていきましょう。

判断基準は、『食事の提供』を行っているかどうか。
具体的には、“店側がテーブルや椅子を用意しているかどうか”がポイントとなります。
店が用意したテーブルや椅子を利用して食事をする場合、屋内・屋外を問わず『食事の提供』とみなされ10%の標準税率が適用されます。

たとえば、昼食時の移動販売車の場合、弁当を販売するだけなら『飲食料品の譲渡』にあたるため、軽減税率8%の対象となります。
しかし、簡易的でも椅子やカウンターなどを設置して、そこで食べる場合は『食事の提供』にあたり、対象外となります。
移動式屋台なども同様です。
一方、公園のベンチで食べる場合は、店が用意したベンチではないため『飲食料品の譲渡』となり、軽減税率の対象になります。
多くの飲食店が集まるフードコートは『食事の提供』にあたり、消費税は10%。
デリバリー・宅配は『飲食料品の譲渡』、ケータリング・出張料理は『食事の提供』という区分になるため、消費税は前者が8%、後者は10%です。

また、軽減税率の対象となるかどうかは、飲食料品の提供を行う時点で決まります。
そのため、軽減税率の対象となるか否かを判断するには、来店時に『店内飲食』か『テイクアウト』かについて明確に確認する必要があります。
最初に『店内飲食』を選んでいたのであれば、店内で食べきれなかった料理を容器に詰めてテイクアウトしても、『店内飲食』という判断になります。

注意したいのは、店内飲食の会計時にお客がレジの横にある商品を購入する場合。
店内飲食分は軽減税率対象外となり税率は10%ですが、たとえば菓子やペットボトルの水などは対象となるため8%になります。
ただし、酒類の場合であれば、軽減税率対象外のため、消費税は10%で販売しなければなりません。

今後は、店内スタッフの目の届かない店の屋外の席で、無申告で飲食していた場合の対応も考えなければなりません。


テイクアウト&宅配利用者の増加を見越して

このように、店内飲食には標準税率がかかるため、10月からは外食を控える人が増えると予想されています。
これまでランチを店で食べていた人たちが、コンビニやスーパーの惣菜を買って会社や公園などで済ませるということも増えるでしょう。
そうしたなかで、飲食店がコンビニやスーパーに勝つためには、軽減税率対象の『テイクアウト』や『宅配』を利用するのも一手。
すでに、スマートフォンですぐに注文できる宅配サービスを導入している飲食店も多くあります。
どこにいても手元から事前に注文ができ、配達時間も指定できる宅配アプリは、その手軽さも受け入れられ、年々利用者も増加。
全国にファミリーレストランを展開する大手フードサービスも参入しています。
このほかにも、テイクアウト専用メニューを開発したり、フードロス対策として余剰食材を使ったデリバリーメニューを格安で提供したり、さまざまな工夫が行われています。

客数減少が予想される10月以降、軽減税率対象となるサービスを強化していくことが売り上げ維持の秘策となりそうです。
この機会に、軽減税率の適用基準をふまえたうえで、サービスの見直しや追加を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年9月現在の法令・情報等に基づいています。