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『手待ち時間』はどう判断する? 休憩時間を巡るトラブルに要注意!

24.01.02
業種別【美容業】
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美容室は朝の開店前から夜の閉店後までと、スタッフの拘束時間が長く、長時間勤務が当たり前といわれています。
このような過酷な労働環境だからこそ、スタッフにはしっかりと休憩してもらう必要があります。
しかし、施術やお客対応などで常に忙しいため、スタッフの休憩時間を確保することはむずかしいかもしれません。
ですが、休憩をさせないと作業効率が落ちるばかりか、労使トラブルに発展する可能性が高くなります。
今回は、美容室勤務での休憩時間の考え方や、休憩の取り方などについて説明します。
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長時間勤務が常態化している美容業界

美容室は営業時間を午前10時から午後8時までに設定している店が多く、シフト制を採用しているところでも、開店前の準備や閉店後の片付けなどを含めると、1日10時間を超える勤務になることがあります。
さらにアシスタントや見習いのスタッフは、技術向上のための練習時間も加わって、一段と勤務時間が長くなることがあります。

長時間におよぶ接客で従業員はストレスや疲れが溜まりやすく、こうした負担が美容師の離職率を上げる原因の一つといわれています。
厚生労働省が発表した『新規学卒就職者の離職状況』によると、2020年3月に卒業した学生で「生活関連サービス業、娯楽業(美容室を含む)」に就いた人の3年以内の離職率は、高卒者が57.0%、大卒者が48.0%でした。
ほかのサービス業が含まれている結果の数字とはいえ、離職率が高いことは間違いないでしょう。

こうした従業員の負担を少しでも減らすために重要なのが、休憩時間です。
立ちっぱなしで運動量も多い美容師は、長時間働き続けていると、どうしても作業効率が落ちてきます。
また、疲れてくると注意力が散漫になり、思わぬ事故が起きてしまう可能性もあります。
美容師は、ハサミをお客の顔の近くで扱うため、集中力を欠くことのないようにしなければいけません。

休憩時間は体力の回復を図り、気力を取り戻すためのものです。
労働基準法でも、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間以上の場合は1時間以上の休憩を取らせるように定められています。

しかし、美容室においては、まとまった休憩時間を取りづらいのが現状です。
オープン前は、開店準備や予約確認などの作業があり、店が開いてからも、次々と来店するお客の対応に追われます。
指名の多い美容師であれば、複数のお客のカットやパーマ、カラーをこなすことになるため、昼食を取る時間も取れないということもあるでしょう。

休憩の定義と休憩時間を確保するための工夫

美容師のなかには、パーマやカラーといった施術に生じる待ち時間の10~15分ほどで、手早く昼食を済ませてしまう人が少なくありません。
労働基準法では休憩時間を分けて取得しても問題ないとされており、たとえば、1時間以上の休憩を取る必要がある場合に、最初の休憩時間が15分であっても、その後に45分の休憩時間をどこかで取得できれば、法的な問題は生じません(ただし、休憩時間が細かく分割されてごく短い場合、休憩時間を自由に過ごすことが事実上むずかしいため、労働者が労働から完全に解放されているとは評価されない場合があります)。

注意したいのは、お客のパーマやカラーの待ち時間は休憩時間ではないということです。
休憩時間は、労働者が「休息のために完全に労働から離れている時間」のことを指します。
パーマやカラーの待ち時間は、仕上がりを待っている時間とはいえ、完全に労働から離れているとはいえないため、休憩時間には含まれません。

同じく、美容室の「手待ち時間」も休憩時間ではありません。
手待ち時間とは、お客の来店を待っている、いわゆる待機時間のことで、労働者は使用者の指揮命令下にある状態です。
お客が来店したらすぐに対応しなければならないため、使用者である美容室の経営者が「今日は手待ち時間が1時間あったので、1時間は休憩させた」と主張しても、認められることはありません。

もし、手待ち時間を休憩時間にカウントしていると、従業員から手待ち時間に該当する時間分の賃金の支払いを求められる可能性があり、労働基準法にも抵触します。
一日のなかで手待ち時間が発生するのであれば、その時間帯を正式な休憩時間にして、スタッフには交代で休憩に入ってもらうことをおすすめします。

また、美容室によっては、手待ち時間が発生しやすい昼の時間帯を店ごと閉めて、昼休憩の時間に充てているところもあります。
一斉に休憩時間を取ることで、交代して休む必要がなく、スタッフ全員がしっかりと休息できるといったメリットがあります。

ほかにも、パートやアルバイトを増やして、スタッフが休憩を取りやすい環境を作っている店もあります。
特に、土・日曜日などの忙しい曜日は、人員を増やし、全員が正しく休憩をとれるよう配慮することが大切です。
休憩をしっかりと取れる店は、離職率の低下はもちろん、求人においても有利になります。
工夫しながら、スタッフの休憩時間を確保するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。