グッドブリッジ税理士法人

商品の制作過程を収益化する『プロセスエコノミー』とは?

23.12.12
ビジネス【マーケティング】
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アイドルやキャラクターなどを応援する「推し」という言葉が一般化する時代において、ユーザーから自社を推してもらう方法を考えることが、企業のマーケティング担当者の課題になりつつあります。
その方法の一つとして代表的なものが、『プロセスエコノミー』というビジネスモデルです。
プロセスエコノミーとは、商品だけではなく、その制作過程を収益化するという考え方で、現在さまざまな分野で注目・活用されています。
今回は、ファンを増やすプロセスエコノミーの手法や注意点などを説明します。
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プロセスエコノミーの考え方と実例

デジタル化の加速などによってユーザーの消費行動が変化し、一つの商品が長期間に渡って売れ続けるということが少なくなりました。
早いサイクルで商品が入れ替わることで、多くの市場が飽和状態となり、どの分野でも他社との差別化を図ることがむずかしくなりつつあります。

商品の収益化や差別化のハードルが上がるなかで、その商品の制作過程を発信することにより他社と差別化を図り、それらを生み出す過程を含めた全体で収益を上げるのが、プロセスエコノミーというビジネスモデルです。

プロセスエコノミーは実業家の古川健介氏が提唱した概念で、対になるものとして『アウトプットエコノミー』という考え方があります。
アウトプットエコノミーとはこれまでのように、商品を販売して利益を得るという一般的なビジネスモデルのことです。

この新しい概念ともいえるプロセスエコノミーの具体例としてよくあげられるのが、K-POPなどでおなじみの「オーディション番組」です。
このオーディション番組は、主に歌手や俳優、ダンサーなど芸能人を目指すオーディション応募者が、厳しいレッスンや合宿などでライバルたちと切磋琢磨し、最終的にオーディションを受けて合否が判定されるまでの様子を映し出す番組です。
デビューに向けて奮闘する出演者に興味を持ってもらったり、応援することで自分の「推し」を作ってもらったりするところに狙いがあります。
このオーディション番組のスタイルは、世界中のエンターテイメント業界において定番の手法になりつつあります。
昨今ではアメリカやイギリスなどの欧米をはじめ、日本や韓国、中国など、世界各国でさまざまなオーディション番組が放送されるようになりました。
また、映画やドラマ、アニメやMVなどのメイキング映像も、制作過程を公開することで、よりコアなファンを獲得するためのプロセスエコノミーといえます。
購入した人にしか見ることのできないメイキング映像をDVDやBlu-rayなどの特典にして収益につなげるというスタイルも、今では一般的になりました。

ほかにも、商品を制作する出資者を募って制作過程を共有するクラウドファンディングや、作品の制作過程を公開するオンライン配信なども、プロセスエコノミーの一種といえます。

プロセスエコノミーのメリットとリスク

プロセスエコノミーには、制作過程を発信することにより、ユーザーがファン化しやすいという特徴があります。
「モノ消費」よりも「コト消費」の時代といわれる昨今では、どのようなきっかけで企画が立案され、どういった経緯を辿って商品化されたのかという背景のストーリーが求められています。
商品やサービスに対する企業の想いや、完成までに奮励努力した背景などを企業側からうまく発信することができれば、完成した商品やサービスに親近感を持ってもらうことができ、最終的に商品や企業のファンになってもらうことが可能です。
ファンの獲得は収益の安定化にもつながり、ファンが増えれば話題性も高くなり、新規ファンの流入も期待できます。

また、商品の完成を待たずに収益を得ることができるのも、プロセスエコノミーの特徴の一つです。
クラウドファンディングに代表されるように、資金不足でも商品の開発を進められるのは大きなメリットであり、商品が完成した後も、その実績は継続的な資金調達につながります。

一方で、プロセスエコノミーにはリスクもあります。
収益化のために商品の制作過程を発信することで、他社に手の内が知られてしまう危険もあります。
制作者の熱意や完成に至る物語を発信しつつ、商品の根幹となる技術やアイデアなどは表に出さないなど、公開するものとしないものを区別するバランス感覚が必要です。

ほかにも、コアファンが増えすぎて炎上などの問題が起きてしまったり、同業他社の参入で、その分野におけるプロセスエコノミーが陳腐化してしまったりといったリスクもあります。
また、分野によってはプロセスエコノミーの効果があまり見込めない可能性もあるでしょう。

自社の商品やサービスをプロセスエコノミーで展開していくか検討する場合、まずはその商品やサービスの特徴やコンセプト、自社のスタンスをふまえたうえで、実施するか否かを決めることが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。