交付されたインボイスに誤りがあった場合の対応
10月からインボイス制度が始まりました。
今回は国税庁がまとめている問い合わせの多い質問の中から、交付されたインボイスに誤りがあった場合の対応についてご案内させていただきます。
取引先からインボイスを受領した際、登録番号や税率の記載等がなく困ったことはありませんか?
本来は相手に連絡をし、インボイス登録事業者であるかどうかの確認をし、場合によっては訂正したインボイスを出し直してもらうといった対応が必要になります。しかし、煩雑な作業となるため、確認した内容を自分でインボイスに記載して修正すればいいのではないかと考えてしまうところです。
以下、国税庁の回答を抜粋します。
売り手(取引先)であるインボイス発行事業者は、交付したインボイス等の記載事項に誤りがあった時は、買手である事業者に対して、修正したインボイス等を交付しなければならないこととされており、買手側において追記や修正を行うことは認められていません。
ただし、買手が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手であるインボイス発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当しますので、買手において適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手であるインボイス発行事業者に確認を求めることも認められます。
つまり、受領したインボイスに買手が自ら修正を加えたものであったとしても、その修正した事項について売手に確認を受けることで、その書類はインボイスであるのと同時に修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当することから、当該書類を保存することで、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
先述の例でいくと、例えば受領したインボイスに登録番号の記載がなく、相手に確認したところ番号の記載が抜けていたことがわかった場合、一方的に受領したインボイスに登録番号を記載して保存するだけでは認められないということになります。
その場合は、受領したインボイスに登録番号を記載したものを、売手に提示し確認を受け、確認を受けたことを明記した上で保管する、といった対応になります。
(※修正した書類に、「訂正事項につき〇月〇日に先方確認済」と明記する。)
もちろん売手が正しい内容で修正したインボイスを再交付してもらえれば問題はありませんが、買手側からも上記のような対応が可能ということになります。
正しい対応をしようと思えば、上記のように売手に正しいインボイスを発行してもらうか、買手が修正したものを売手に確認してもらうかといったどちらかの対応が必要になりますが、どちらにしても買手側の負担が増えることに変わりはありません。
そこでもう1つの対応として、経過措置を使うということが考えられます。
インボイス等保存方式の下では、インボイス発行事業者以外の者(消費者、免税事業者、又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入については、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません。
ただし、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入であっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
経過措置を適用できる期間等は次のとおりです。
期間 | 割合 |
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 仕入税額相当額の80% |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで | 仕入税額相当額の50% |
先述のインボイスのように、例えば受領したインボイスに登録番号の記載がなかった場合、相手方に確認をして修正をするのか、もしくは記載がないということはインボイス発行事業者以外の者と判断し、経過措置を使うといった対応もできます。
ただし経過措置を使う場合は、本来仕入税額相当額の100%を控除できるところが、期間によって80%~50%になるということになりますので、納税においては不利があることをご承知おき下さい。
個別に確認作業を行っていくと手間のかかる作業になってきてしまいますが、経過措置を使う場合は控除割合が下がってしまうため、どちらを優先するのか社内の対応について予め確認しておくことをお勧め致します。