グッドブリッジ税理士法人

一人親方も保護対象に! 危険有害な作業を請け負わせる際の注意点

23.10.31
業種別【建設業】
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労働安全衛生法に基づく省令の改正により、2023年4月1日から事業者に対して、一人親方や下請業者などに危険有害な作業を請け負わせる場合、一定の保護措置が義務づけられました。
これまで、事業者と同じ作業場所で働く請負人の安全衛生対策は、原則として本人や下請業者に任されてきましたが、今後は元請となる事業者が責任を負うことになります。
では、危険有害な作業を請負人に請け負わせる場合、事業者はどのような保護措置を行えばよいのでしょうか。
改正の背景や義務化された措置の内容などについて説明します。
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危険有害な作業に関する省令を改正した背景

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守ることを目的とした法律で、これまで事業者に雇用される労働者を保護する対象として運用されてきました。
特に建設業においては、労働者が危険な作業に従事することも多く、同法の第22条や省令では、事業者に、労働者に対する健康障害を防止するための必要な措置の実施を定めており、その対象となる作業を「危険有害な作業」としています。
そのなかには、作業員の健康被害を引き起こすアスベスト(石綿)に関する作業も含まれています。

2021年5月17日には、アスベストによる健康被害を受けた作業員や遺族がメーカーや国に対して損害賠償を求めた『建設アスベスト訴訟』において、最高裁判所がある判決を下しました。
最高裁の判決は「労働安全衛生法の対象は事業者に雇用される労働者だけに限定しない」というもので、アスベストの健康被害を受けた労働者以外の一人親方や下請業者に対する国の責任も認めた形となります。

この判決をふまえて、保護対象の見直しが行われ、「労働安全衛生規則」や「石綿障害予防規則」など、労働安全衛生法に基づいて規定されている11の省令について改正が行われました。
改正によって、事業者は自社で雇用している従業員と同様に、危険有害な作業を請け負わせる請負人に対しても、一定の保護措置を講じる責任を負うことになります。
事業者が請負人に対して実施する必要があるのは、以下の項目です。

・請負人だけが作業を行うときも、事業者が設置した局所排気装置等の設備を稼働させる
(または請負人に設備の使用を許可する)等の配慮を行うこと。
・特定の作業方法で行うことが義務付けられている作業については、請負人に対してもその作業方法を周知すること。
・労働者に保護具を使用させる義務がある作業については、請負人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること。

事業者が講じる必要のある措置と範囲

危険有害な作業の現場には、請負人のほかにも、資材搬入業者や警備員などがいます。
事業者は請負契約の有無に関わらず、同じ作業場所にいる労働者以外の人に対しても、以下の措置を講じる義務があります。

・労働者に保護具を使用させる義務がある作業場所については、その場所にいる労働者以外の人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること。
・労働者を立入禁止や喫煙・飲食禁止にする場所について、その場所にいる労働者以外の人も立入禁止や喫煙・飲食禁止とすること。
・作業に関する事故等が発生し労働者を退避させる必要があるときは、同じ作業場所にいる労働者以外の人も退避させること。
・化学物質の有害性等を労働者が見やすいように掲示する義務がある作業場所について、その場所にいる労働者以外の人も見やすい箇所に掲示すること。

この際の周知は、常時作業場所の見やすい場所に掲示または備え付け、書面の交付、磁気テープやディスクへの記録、口頭などで行います。

また、事業者が作業のすべてを請負人に請け負わせる場合は、事業者は発注者となるため、事業者としての保護措置を講じる義務を負うことはありません。

さらに、保護措置を講じるのは請負契約を結んだ相手に限定されるため、重層請負の場合は、作業を請け負った請負人自身が下請に対する義務を負うことになります。
たとえば、一つの危険有害な作業に対して三次下請負までが従事する場合、一次下請業者は二次下請業者に対して義務を負い、二次下請業者は三次下請業者に対して義務を負うことになります。
一次下請業者が三次下請業者に対して保護措置を講じる義務を負うことはありません。

大切なのは、事業者が法改正をふまえてしっかり保護措置を行い、請負人に指示および周知した保護措置を確実に実施させることにあります。
もし、請負人が義務づけられた保護措置に従わない場合、事業者は請負人に対し、保護措置を守るように指示を出しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。