グッドブリッジ税理士法人

給与のデジタルマネー払いを導入するうえで気をつけたいこと

23.09.26
ビジネス【企業法務】
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労働基準法の省令改正によって、2023年4月1日から給与のデジタルマネー払いが解禁になりました。
これまでの労働基準法では、原則として賃金の直接払いが定められており、労働者の過半数で組織する労働組合か、もしくは労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結ぶことで、銀行振込による給与の支払いが認められてきました。
今回の改正によって、給与の支払い方法の選択肢が増えます。
『給与のデジタルマネー払い』を導入するメリットと、その際に押さえておきたいポイントを解説します。
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給与をデジタルマネー払いにする利点

2022年10月、厚生労働省の労働政策審議会分科会は、給与のデジタルマネー払いが行える新制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承しました。
これにより、2023年4月から給与のデジタルマネー払いが解禁になりました。

デジタルマネーとは電子的な決済手段のことで、利用する前にチャージを行うプリペイド型、後払いのポストペイ型、銀行口座から即時引き落とすデビット型といった複数の種類があります。
一般的に『電子マネー』や『デジタル通貨』などとも呼ばれ、取り扱う事業者や支払い方式によって、交通系・流通系・クレジットカード系・QRコード系などに分類することができます。

電子的なデータのやり取りを通じて、現金と同じように物を購入したり、サービスを受けたりすることができるのは、どのデジタルマネーも共通です。
また、デジタルマネーによっては買い物をするとポイントが貯まるものや、特典が受けられるものなどもあります。
では、今回の給与のデジタルマネー払い解禁によって、どのようなメリットがあるでしょうか。

まず、労働者はデジタルマネーで給与が受け取れると、銀行口座からデジタルマネーにチャージする必要がなくなります。
また、銀行口座を介さないため、現金を引き出す際の手数料や時間などもかかりません。

企業にとってのメリットは、銀行口座への振込よりデジタルマネーの送金手数料の方が安ければ、事務手数料が削減できることです。
また、口座の開設がむずかしい外国人労働者への支払いがスムーズになるのも、大きな利点です。
デジタルマネーのニーズが高まるなかで、銀行振込以外の選択肢を用意することは、労働者の満足度の向上や福利厚生の一環にもなるでしょう。

資金移動業者から選んで労働者の同意を得る

実現すれば便利なデジタルマネー払いですが、解禁したとはいえ、すべてのデジタルマネーで給与の支払いができるわけではありません。
2023年4月1日から、デジタルマネーを取り扱う資金移動業者は厚生労働大臣による指定申請が可能になりました(ただし、審査には数カ月かかることが見込まれます)。
この審査基準を満たし、指定を受けた資金移動業者のみ、デジタルマネーで給与を取り扱うことが認められます。
給与のデジタルマネー払いを検討している企業は、指定を受けて登録された資金移動業者が提供するデジタルマネーのなかから、使用するサービスを選ぶことになります。
金融庁では、登録されている資金移動業者を公開しているので、確認しておきましょう。

また、給与のデジタルマネー払いを導入するのであれば、銀行振込と同様に、労働者の過半数で組織する労働組合か、もしくは労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結ばなければなりません。
協定を結ぶ際には、以下の項目について個々の従業員に説明しておきましょう。

●口座の上限額は100万円以下
デジタルマネーの口座は預金するためのものではなく、送金や支払いに使用するものという前提があるため、口座に振り込まれる上限額は100万円以下に定められています。
これを超える給与は、あらかじめ労働者が指定した銀行口座などに自動的に振り込まれます。

●受取額の設定
労働者には給与の一部をデジタルマネーで支払い、残りを銀行口座に振り込むことも可能です。
労働者が希望する金額をデジタルマネーで支払うように設定します。

●口座残高の現金化も可能
給与のデジタルマネー払いの指定口座から、ATMや銀行口座などへ出金することで現金化が可能です。
払い出し方法や手数料などは資金移動業者によって異なるため、事前に調べて労働者へ説明できるようにしておきましょう。
また、給与のデジタルマネー払いに関しては、不正取引や資金移動業者が破綻したときなど、万が一のための補償制度があります。
そのほか、労働者があらかじめ知っておくべきことをまとめて伝えてください。

もし、労働者が給与のデジタルマネー払いを希望しない場合は、会社の都合でそれを強制してはいけません。
労働者の同意がないまま導入すると労働基準法違反となり、罰せられる場合があるので注意してください。

給与のデジタルマネー払いは、これからのIT社会で新たな常識となるはずです。
今回の解禁に伴い、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。