グッドブリッジ税理士法人

1回お試しのつもりが定期購入に! ネット通販の落とし穴

22.08.09
ビジネス【法律豆知識】
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近年、いわゆる詐欺的な定期購入商法による被害が増えています。
『初回無料』や『お試し』と書いておきながら、実際には定期購入が条件となっていたり、『いつでも解約可能』と表示してあるのに、実際には解約に細かい条件があったりして、定期購入の代金を支払わざるをえなくなるケースです。
そのような被害を防ぐため、『特定商取引法』が改正され、2022年6月に施行されました。
今回は、改正特定商取引法について説明します。
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改正法による規制の強化

通信販売において、初回無料やお試し価格といった表示につられて契約した消費者が、高額な代金や違約金の支払いを迫られるケースが増えています。
独立行政法人国民生活センターが公表した『PIO-NET にみる2020年度の消費生活相談の概要』によると、通信販売で『お試し価格』『初回無料』などをうたった健康食品、化粧品、飲料の定期購入に関する相談件数は、2016年には1万4,909件でしたが、2020年には5万5,968件と激増。
この状況を踏まえ、特定商取引法が改正され、通信販売に関する改正事項は2022年6月1日に施行されました。

改正特定商取引法(以下、改正法)では、通信販売において、事業者所定の書面またはインターネット等を利用する方法により事業者が消費者から申込みを受ける場合を『特定申込み』と定義し、特定申込みの場合のルールが新たに設けられました
たとえば、テレビ放映された広告を見た消費者が、電話により契約の申込みを行う場合などは特定申込みに当たりませんが、申込用はがきや申込用紙が用いられる場合や、インターネット通販は特定申込みに該当します。

特定申込みを受ける事業者は、申込書面や申込画面において、商品等の分量、販売価格、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期等を記載しなければいけません
また、意に反して契約を申込ませる行為を禁止する“事業者の義務”が定められました。
改正法により、事業者がこれらの規定に違反した場合には、行政処分に加えて罰則の対象とされます。

消費者においては、事業者がこれらの表示規制に反して、不実の表示や表示すべき事項を表示しなかったこと等により、消費者が誤認して特定申込みをしたといえる場合には、その申込みを取り消すことができます

また、通信販売にかかわる契約の申込みの撤回または解除を妨げようと、事業者が撤回や解除に関する事項等に対して不実の告知を行う行為が禁じられました。
それでも事業者が不実の告知をしたり、申込書面や申込画面に表示すべき事項を表示せず、または誤認させるような表示をしたりした場合には、適格消費者団体による差止請求の対象になります。


困難なネット販売で消費者が注意すべき点

上記の改正は、いずれも通信販売における被害の急増が背景にあります。
さらに、少子高齢化が進展するなかでの高齢者の脆弱性につけ込む悪質商法の急増や、成年年齢の引き下げに伴う若年成人の消費者被害への懸念という視点もあります。

改正法による規制強化によって、悪質な定期購入商法の減少が期待されています。
しかし、トラブル事例をみると、消費者が誤認し得る表示が依然として見受けられるのが実情です。
したがって、消費者一人一人が意識的に表示内容を確認することが、なお重要であるといえるでしょう。

消費者においては、注文を確定させる前に、たとえば以下のような内容を、しっかりと確認することが大切です。
(1)定期購入が条件になっていないか(例:初回特別価格、○カ月コース等)
(2)定期購入が条件になっている場合の、継続期間や購入回数の内容
(3)支払うことになる総額
(4)解約する際の連絡手段
(5)解約・返品できる場合の条件

なお、2022年6月1日以降、消費者が誤認して特定申込みをした場合は、契約を取り消せる可能性が高くなりました。
契約取り消しをするためには、最終確認画面のスクリーンショットを取るなど、誤認の証拠を残すことが有用です。

インターネットでの購入申込みは、用語や仕様が難しいことも多いものです。
一人では判断がつかないときには家族に相談したり、消費生活センターに問い合わせてみましょう。


※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。