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もし倒産してしまったら? 法人の『破産手続』の概要と流れ

21.07.13
ビジネス【企業法務】
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コロナ禍の影響により、事業の継続が困難になった事業者が後を絶ちません。
裁判所に破産手続の申し立てを行った企業のニュースも多く聞きます。
では、実際に倒産が決定した場合、どのような段取りを踏んで、実際に倒産となっているのでしょうか。
今回は、意外と知られていない法人破産の手続きの流れを説明します。
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会社を完全に消滅させるなら『清算型』

まず、よく耳にする“倒産手続”についてお話しします。
倒産手続とは、破産手続・民事再生手続・会社更生手続・特別清算手続・私的整理手続など、倒産処理に関連する各種手続の総称です。
つまり実際の法制度において、倒産手続という名称の手続きはありません。

倒産処理のための手続きには、債務者のすべての資産を清算して、これを債権者に平等に分配することを目的とする『清算型』と、債務者の事業を再建し、再建された事業から生じる収入・収益を債権者への弁済の原資とする『再建型』の2つに大別されます。

そして、清算型手続きの基本となるのが『破産手続』です。
会社を消滅させて法人格を喪失することになるため、実質的にこの破産手続が倒産手続の最終手段といえます。


破産の申し立てから会社消滅までの流れ

法人の破産手続は、弁護士と相談しながら進めていくのが一般的です。
破産申し立ての準備としては、債務の種類や金額、会社が保有している資産、従業員の人数や雇用形態の確認などを行い、必要書類を用意します。
準備が整ったら事業を廃止し、従業員については解雇を行います。

その後の破産手続のおおまかな流れは、以下の通りです。

(1)受任通知の発送
代理人弁護士から、債権者に対して、会社が破産申し立てを予定していること、今後の連絡窓口が代理人弁護士となることを通知します。

(2)破産申し立て
管轄の裁判所に破産手続を申し立てます。
法人の場合、運転資金等の借入れについて、法人の代表者個人が保証人となっていることが多いため、法人の破産申し立てと同時に代表者個人の破産申し立てをするケースが多くなります。

(3)破産手続開始決定
破産の申し立てをすると、裁判所が『破産手続開始決定』を出し、そこから裁判所での破産手続が開始します。
裁判所で正式に破産手続が開始するための原則的な要件は、債務者の『支払不能』です。
支払不能とは、債務者がその債務のうち弁済期にあるものについて、支払い能力がないために、一般的かつ継続的に弁済できない状態を指します。
なお、支払不能の判断が困難な場合があることから、『支払停止』があれば支払不能が推定されます(破産法15条2項)。
また、法人破産の場合は、『債務超過』すなわち、その債務についてその財産をもって完済することができない状態となっていることも破産手続の開始原因となります。

(4)破産管財人の選任
破産手続開始決定と同時に、裁判所によって破産管財人が選任されます。
破産管財人は、手続きを実質的に主導する立場にあり、破産手続の中核的な役割を担います。
法人の在庫や備品類、所有不動産などを売却し、金銭に変えるのも破産管財人の担当です。

(5)債権者集会
破産手続開始決定後、破産管財人によって資産の回収等が進むと、債権者集会が行われます。
債権者集会は形骸化していることが多く、実際に債権者が出席するケースは稀です。
簡易な案件では1回のみで終わりますが、複数回開催される事件もあります。

(6)配当
破産管財人の調査や資産回収等により、債権者への配当を実施できることが判明した場合には配当が行われ、破産手続は終結します。
また、破産手続に必要な費用を負担するだけの財産が存在しないことが判明した場合も、一定の手続き後に破産手続が廃止(中止)されます。

このような破産手続により、会社は消滅します。
どうしても経営を続けられなくなり、破産手続を行うことになった場合には、債権者や従業員などのことを考え、迅速な対応と周知を心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。