グッドブリッジ税理士法人

被相続人への貢献度を評価! 遺産分割の『寄与分』と『特別の寄与』

21.06.08
ビジネス【法律豆知識】
dummy
家族が亡くなり、相続が起きると、相続人の間で遺産分割協議を行うことになります。
相続人の一人が、自分はほかの相続人よりも被相続人(亡くなった方)に尽くしてきたとして、その貢献度を相続分に反映してほしいと考えた際、どのようなケースであれば可能なのでしょうか。
今回は、ある相続人が、被相続人の生活の世話をしていたり、財産の増加に特に貢献していたりした場合に、ほかの相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる『寄与分』について説明します。
dummy
財産維持などへの貢献を反映する『寄与分』

遺産分割協議を行う際の法定相続分は、民法900条に規定されています。
たとえば、母親が亡くなり、相続人が長男と長女の二人であった場合、母親(被相続人)が残した財産の相続分は、長男・長女がそれぞれ2分の1ずつです。
しかし、長女が、「自分は長年母親の面倒を見て介護もしてきたのに、何もしてこなかった長男と同じでは納得できない」と主張するかもしれません。
民法には、相続人の被相続人に対するこのような貢献を遺産分割に反映させる制度が定められており、これを『寄与分』といいます。

寄与分は、『共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者』がいる場合に認められます(民法904条の2)。

ただし、寄与分として認められる貢献は、被相続人と相続人の身分関係(夫婦関係、親子関係等)に基づいて、通常期待されるような程度を超える貢献とされています。
無償性、専従性、継続性等が必要となり、さらに、被相続人の財産が維持または増加したことも必要です。
たとえば、“被相続人が経営していた会社に関与したことにより、会社が大きく売上を伸ばした”、“相続人が金銭的援助をしたことにより会社が経営難から立ち直った”、“通常はヘルパーを頼むところを一定期間休職し、被相続人の介護を全面的に担った”などの場合がそれにあたります。

このように考えると、実際に寄与分が認められるケースはそう多くないといえるでしょう。


相続人以外でも主張できる『特別の寄与』

寄与分は、相続人間の公平のための制度なので、寄与分を主張できるのは相続人に限られていました。
しかし、2019年の民法改正で、相続人以外の人の貢献を考慮するため、相続人に対し寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)を請求できる『特別の寄与』の制度が設けられました(民法1050条)。

そこには、先述した民法904条の2にはない、無償要件が明記されています。
『被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族』が、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができるようになりました。

たとえば、母親が亡くなり、相続人が長男と長女の二人である場合に、母親と長男夫婦が同居していて、母親を献身的に介護していたのは長男の妻であったとします。
従来、寄与分は、相続人にのみ認められる制度のため、相続人ではない長男の妻が献身的に母親を介護していたとしても、長男の妻は寄与分を主張することはできませんでした。
裁判所としては、長男の妻を長男と一体であるものとみて、相続人である長男の寄与分として認める等により、被相続人である母親に貢献した長男の妻の救済を図ることもありましたが、相続人以外の人の貢献を考慮することは難しいのが現実でした。
しかし、特別の寄与の制度が新設されたことによって、相続人以外も寄与分を主張できるようになったのです。
より一層、実態に即した遺産分割が可能になったといえるでしょう。

相続が開始したら、相続人同士はそれぞれの立場を思いやることが大切です。
被相続人に尽くしてきた相続人がいる場合には、現物分割の際に第一希望のものを相続できるようにするなど配慮して、円滑に協議を進められるようにしたいものです。


※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。